銀河鉄道の夜

2話 二、活版所

1,001字 約2分 2026年9月2日 公開

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 ジョバンニが学校の門を出るとき、同じ組の七八人は家へ帰らずカムパネルラをまん中にして校庭の(すみ)(さくら)の木のところに集まっていました。それはこんやの星祭に青いあかりをこしらえて川へ流す烏瓜(からすうり)を取りに行く相談らしかったのです。

 けれどもジョバンニは手を大きく()ってどしどし学校の門を出て来ました。すると町の家々ではこんやの銀河の祭りにいちいの葉の玉をつるしたりひのきの(えだ)にあかりをつけたりいろいろ仕度(したく)をしているのでした。

 家へは帰らずジョバンニが町を三つ曲ってある大きな活版処にはいってすぐ入口の計算台に居ただぶだぶの白いシャツを着た人におじぎをしてジョバンニは(くつ)をぬいで上りますと、()き当りの大きな()をあけました。中にはまだ昼なのに電燈がついてたくさんの輪転器がばたりばたりとまわり、きれで頭をしばったりラムプシェードをかけたりした人たちが、何か歌うように読んだり数えたりしながらたくさん働いて()りました。

 ジョバンニはすぐ入口から三番目の高い卓子(テーブル)(すわ)った人の所へ行っておじぎをしました。その人はしばらく(たな)をさがしてから、

「これだけ拾って行けるかね。」と云いながら、一枚の紙切れを(わた)しました。ジョバンニはその人の卓子の足もとから一つの小さな平たい(はこ)をとりだして向うの電燈のたくさんついた、たてかけてある(かべ)の隅の所へしゃがみ()むと小さなピンセットでまるで粟粒(あわつぶ)ぐらいの活字を次から次と拾いはじめました。青い胸あてをした人がジョバンニのうしろを通りながら、

「よう、虫めがね君、お早う。」と云いますと、近くの四五人の人たちが声もたてずこっちも向かずに冷くわらいました。

 ジョバンニは何べんも眼を(ぬぐ)いながら活字をだんだんひろいました。

 六時がうってしばらくたったころ、ジョバンニは拾った活字をいっぱいに入れた平たい(はこ)をもういちど手にもった紙きれと引き合せてから、さっきの卓子の人へ持って来ました。その人は(だま)ってそれを受け取って(かす)かにうなずきました。

 ジョバンニはおじぎをすると扉をあけてさっきの計算台のところに来ました。するとさっきの白服を着た人がやっぱりだまって小さな銀貨を一つジョバンニに渡しました。ジョバンニは(にわ)かに顔いろがよくなって威勢(いせい)よくおじぎをすると台の下に置いた(かばん)をもっておもてへ飛びだしました。それから元気よく口笛(くちぶえ)()きながらパン屋へ寄ってパンの(かたまり)を一つと角砂糖を一(ふくろ)買いますと一目散(いちもくさん)に走りだしました。

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