A LETTER FROM PRISON

4話 直接行動の意義

965字 約2分 2012年4月1日 公開

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 私はまた今回の檢事局及び豫審廷の調べに於て、直接行動てふことが、矢張暴力革命とか、爆彈を用うる暴擧とかいふことと殆ど同義に解せられてゐる觀があるのに驚きました。

 直接行動は英語のヂレクト・アクシヨンを譯したので、歐米で一般に勞働運動に用うる言葉です。勞働組合の職工の中には無政府黨もあり、社會黨もあり、忠君愛國論者もあるので、別に無政府主義者の專有の言葉ではありません。そして其意味する所は、勞働組合全體の利益を増進するのには、議會に御頼み申しても埒が明かぬ、勞働者のことは勞働者自身に運動せねばならぬ。議員を介する間接運動でなくして勞働者自身が直接に運動しよう、即ち總代を出さないで自分等で押し出さうといふのに過ぎないのです。今少し具體的に言へば、工場の設備を完全にするにも、勞働時間を制限するにも、議會に頼んで工場法を拵へて貰ふ運動よりも、直接に工場主に談判する、聞かなければ同盟罷工をやるといふので、多くは同盟罷工のことに使はれてゐるやうです。或は非常の不景氣、恐慌で、餓孚途に横はるといふやうな時には、富豪の家に押入つて食品を收用するもよいと論ずる者もある。收用も亦直接行動の一ともいへぬではない。又革命の際に於て、議會の決議や法律の協定を待たなくても、勞働組合で總てをやつて行けばよいといふ論者もある。是も直接行動とも言へるのです。

 併し、今日直接行動説を贊成したといつても、總ての直接行動、議會を經ざる何事でも贊成したといふことは言へませぬ。議會を經ないことなら、暴動でも、殺人でも、泥棒でも、詐僞でも皆直接行動ではないか、といふ筆法で論ぜられては間違ひます。議會は歐米到る處腐敗してゐる。中には善良な議員が無いでもないが、少數で其説は行はれぬ。故に議院をアテにしないで直接行動をやらうといふのが、今の勞働組合の説ですから、やるなら直接行動をやるといふので、直接行動なら何でもやるといふのではありません。同じく議會を見限つて直接行動を贊する人でも、甲は小作人同盟で小作料を値切ることのみやり、乙は職工の同盟罷工のみを賛するといふ樣に、其人と其場合とによりて目的、手段、方法を異にするのです。故に直接行動を直ちに暴力革命なりと解し、直接行動論者たりしといふことを今回の事件の有力な一原因に加へるのは、理由なきことです。

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