妖怪玄談

11話 第二段 コックリの仕方を論ず 第一一節

2,251字 約5分 2010年9月15日 公開

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 以上、諸国に行わるるところの仕方は種々まちまちにして、一定の規則なきは明らかなり。竹の寸法、縄の巻き方、飯蓋(めしぶた)、風呂敷の装置(しかけ)等は、必ずしも前述の法式によらざるも、適宜に執り行ってしかるべし。また、これを試むるに当たりて、あるいは衆人一同に「コックリ様、御移り下され」というときと、衆人中一人のみ導師となりていうときと、衆人のほか別に崇敬者を立てていわしむるときとのいろいろの仕方あるも、これまたいずれの法式を用うるも不可なることなし。ただし、コックリは言語を有せざるをもって、問いを起こすときは、あらかじめその答えの方向を定めざるべからず。これを定むるの法、あるいは竹の足のあげ方を取り、あるいは飯蓋の回転の仕方を取るの別ありて、例えば明日の天気をたずねんとするときは、まず天気の吉なるときは足をあげよ、あるいは左右に回転せよと命じおくなり。かくのごとく、あらかじめ相定めてその告ぐるところの答えを見るに、事実に適合するもの十中八九ありという。これ実に奇怪といわざるべからず。さきごろ埼玉県北足立郡中野村、青木氏の報知を得たれば、氏の実験の始末を左に掲げて、その一例を示さん。

(前略)座中の一人盆に向かい、よびて曰く、「狐狗狸(こっくり)よ、狐狗狸よ、(なんじ)の座をここに設けたり。速やかに来たれ」と。また曰く、「狐狗狸よ、狐狗狸よ、すでに来たらば、その兆しとして盆を右方にめぐらせ」と。また曰く、「この盆を右方にめぐらすをいとわば、なんぞ左方にめぐらさざるや」と。このとき、盆の徐々に運行するを見る。けだし、この動作たる、突然行わんと欲するもあたわず、少なくも三、四回以上これを試みざれば動かず。もっとも、一回この動作を呈せし家は、その後いずれの日にこれを行うも来たらざるなく、かつ、その来たるや迅速なり。また曰く、「その盆をして一周せしめよ」と。このとき、盆全く一周す。また曰く、「汝、狐なれば、この足(三本の竹のうち一本を指していう)をあげよ」と。このとき足あがらざるをもって、衆その狐にあらざるを知る。また曰く、「汝、天狗ならばこの足をあげよ」と。このときまた足あがらざるをもって、衆その天狗にあらざるを知る。また曰く、「しからば汝、猫ならんか。果たして猫ならばこの足をあげよ」と。このとき竹の足あがること一寸ばかりゆえに、猫の来たると仮定す。また曰く、「汝、この足を三寸ほどあげよ」と。このとき竹の足あがること三寸。また曰く、「汝は甲村より来たるや。もし、果たして甲村に住するものならばこの足をあげよ」と。このとき足あがらざるをもって、すなわち甲村より来たらざるを知る。また曰く、「もし乙村ならばこの足をあげよ」と。このとき足あがるゆえに、乙村より来たるものと断定す。また曰く、「(なんじ)楽戯(あそび)に来たるや」と。このとき足あがらざるゆえ、楽戯にあらずと断定す。また曰く、「しからば、汝は(もの)(おし)えに来たるか。物教えに来たるならばこの足をあげよ」と。このとき竹の足あがる。すなわち、その吉凶禍福を告ぐるために来たるを知る。また曰く、「某の家には出火等の(わざわい)ありや」と。このとき足あがらず。すなわち、災いのなきを知る。また曰く、「しからば、某の家には幸福ありや。もし幸福あらばこの足をあげよ」と。このとき足あがらず。また曰く、「しからば、福きたらざるか」と。このときまた足あがらず。また曰く、「しからば、いまだ全く明らかならざるか」と。このとき足あがる。すなわち、禍福いまだ知れずと判断す。また曰く、「汝の年齢は幾歳なりや。一歳を一足としてこの足をあげよ」と。このとき竹の足あがること十回なるをもって、この猫の年齢十歳なるを知る。また曰く、「明日は晴天なればこの足をあげよ」と。このとき足あがらず。また曰く、「しからば、明日は雨天なりや」と。このときまた足あがらず。また曰く、「しからば、雪天なりや」と。このとき一本の足徐々としてあがる。衆、すなわち翌日は降雪と断定す。(中略)また、コックリに向かって問うて曰く、「汝は一本の足にておどるや」と。このとき足あがらず。また問う、「汝は三本の足にておどるや」と。このとき足あがらず。また問う、「汝二本の足にておどるや」と。このとき足あがる。すなわち、その二本の足にておどるべしと断定す。また問う、「軍歌にておどるや」と。このとき足あがらず。また問う、「情死節(しんじゅうぶし)にておどるや」と。このとき足あがらず。また問う、「しからば相撲甚句(じんく)にておどるや」と。このとき竹の足あがる。よって一人、相撲甚句を歌い、竹の足二本とその歌の調子に合わせ、こもごもその足を上下す。歌人の音声清らかにして調子熟すれば、その足の上下一層迅速にして、座中を縦横におどりあがる。すでにこのときに当たりては、これまで三人にてなしたるも、ただ一人にて、よくその足をして上下せしむることを得るに至る。

 以上はその一例の概略を記載せしものなり。その他、小生の実験するところによるに、晴雨、年齢のほかに時間、人数、文字等のことをたずぬるも、大抵みな適中すといえども、例えば一つの書籍を取りて、この紙数は幾枚ありと問うがごとき、綿密なることは確答を得ること難し。また、狐、(いぬ)、狸、猫のほか種々の獣類至らざるなしといえども、なかんずく天狗と名づくるものの来たるときは、その予言もっともよく事実に適中し、衆人の最も信用を置くところなり。臼、木鉢、皿等の重量のものをめぐらして、よくその足をあぐるは、大抵この天狗の来たるときに限る、云云(うんぬん)

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