14話 第三段 コックリの伝来を論ず 第一四節
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今、コックリの原因事情を究明するに当たり、まずここに、その起源、伝来を叙述するを必要なりとす。余、そのいずれの地にはじめて起こり、たれびとの発明せしものなるやを究めんと欲し、諸国の有志にその流行のありさまを問い合わせたるに、今日まで余の手もとに達したる報知によるに、一昨明治十八年の秋より昨十九年の春にわたりて、相、豆、駿、遠、尾、濃の間に流行し、昨年中は西は京阪より山陽、南海、西国まで蔓延し、東は房、総、常、野、武、信の諸州にも伝播し、当年に至りては奥州に漸入するを見る。ひとり北陸地方に、いまだその流行するを聞かざるなり。これによりてこれを推すに、このことは東海諸国に縁起せしを知るべし。しかるに、人の伝うるところによるに、この法は三百年前よりすでに日本に伝わり、信長公はじめてこれを試みられたること旧記に見えたりといい、あるいは徳川氏の代にこれを行ったること古老の言に存せりといい、あるいは薩州より起これりといい、あるいは外国より来たるというも、みな坊間の風説にとどまりて、確固として信を置くべきものなし。しかれども、その法の本邦に起こるにあらずして、外国より入りきたりしことは疑うべからざるもののごとし。この説によるに、あるいは数百年前、キリシタン宗に混じて本邦に伝わりしといい、あるいは維新の際、日本人のアメリカにありしもの帰朝してその法を伝えたりというも、これまた信拠すべからざるを知る。なんとなれば、数年前すでに本邦に入りしもの、なんぞ久しく民間に伝わらずして、昨今はじめて流行するに至りしや、その理はなはだ解し難し。たとい維新前に本邦人中、一、二人のこれを知りしものありとするも、一昨年来諸州に流行せしものは、他の起源あるによるや疑いをいれず。