妖怪玄談

6話 第二段 コックリの仕方を論ず 第六節

1,042字 約2分 2010年9月15日 公開

読み方を変える
字の大きさ
行の間隔
1行の長さ
書体
配色
組み方

 余が諸方より得たる報道によるに、コックリの仕方は、国々によりて不同ありて一定せざるもののごとし。今、左に二、三の報道を挙げて、その仕方を示さんとす。まず、美濃(みの)国恵美郡中野方村、山田氏より昨年寄せられたる書状によるに曰く、

 名古屋、岐阜をはじめ尾濃(びのう)いたるところ、当春来一時流行せしものは、その称を狐狗狸(こっくり)また御傾(おかたぶ)きと名づくるものなり。その方、生竹の長さ一尺四寸五分なるもの三本を造り、()をもって中央にて三()に結成し、その上に飯櫃(めしびつ)(ふた)を載せ、三人各三方より相向かいて座し、おのおの隻手あるいは両手をもって櫃の蓋を緩くおさえ、そのうちの一人はしきりに反復「狐狗狸様、狐狗狸様、御移り下され、御移り下され、さあさあ御移り、早く御移り下され」と祈念し、およそ十分間も祈念したるとき、「御移りになりましたらば、なにとぞ甲某が方へ御傾き下され」といえば、蓋を載せたるまま甲某が方へ傾くとともに、反対の竹足をあぐるなり。そのときは三人ともに手を緩く浮かべ、蓋を離るること五分ほどとす。それより後は、三人のうちだれにても種々のことを問うことを得べし。すなわち、「彼が年齢は何歳なるか、一傾(いっけい)を十年とし、乙某または丙某が方へ御傾き下され」というとき、目的の人三十代なれば三傾し、五十代なれば五傾すべし。端数を問うに、これと同じくただ一年を一傾となすのみ。また「あなたは甚句(じんく)おどりは御好きか御嫌いか、御好きならば左回りを御願い申します」といえば、好きなれば回転し、嫌いなれば依然たり。このときもまた、手を浮かぶるなり。左右回りに代うるに、御傾き何べんと望むも、あえて効なきにあらず、かえって効あり。その他、なにの数を問うも、なにごとをたずぬるも、知りたることは必ず答えあり。甚句おどり、カッポレおどり、なににても好きなるものは、たとい三人は素人なるも、三()足が芸人の調子に合わせておもしろくおどるべし。このときまた、手を緩く浮かぶるなり。傍観者にしてうかがいたきことあるときは、三人のうちへ申し願いすべし。また、傍観者自ら代わりておさえんとするも勝手次第なり。識者もこれを実験して、その理に黙するあり。たとい黙せざるも、名称によりて答うるのみ。取るべき説なし。

 生、これを研究せんと欲し、諸所に臨みて人の行うところを試むるに、信仰薄きものは、たとえ三十分間おさえおるも移ることなく、男女三人なればよく移り、空気流通して精神を爽快ならしむる場所にては移ること遅く、櫃の蓋の上に風呂敷を覆えば、なおよく移るなり。

目次に戻る

目次