唐模様

6話 空蝉

727字 約1分 2011年9月9日 公開

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 (たう)開元年中(かいげんねんちう)()()(せい)()(あひだ)劫賊(こふぞく)あり。近頃(ちかごろ)不景氣(ふけいき)だ、と徒黨(とたう)十餘輩(じふよはい)(かた)らうて盛唐縣(せいたうけん)塚原(つかはら)(いた)り、數十(すうじふ)(つか)(あば)きて金銀寶玉(きんぎんはうぎよく)掠取(かすめと)る。(つか)(なか)に、(とき)(ひと)白茅冢(はくばうちよう)()ぶものあり。賊等(ぞくら)(きそ)うてこれを(あば)く。(はう)一丈(いちぢやう)ばかり()るに、地中(ちちう)(ふか)(ところ)四個(しこ)房閣(ばうかく)ありけり。(たゞ)()(ひがし)(ばう)には、(きうそう)槍戟(さうげき)()ちたる人形(にんぎやう)あり。(みなみ)(ばう)には、(そうさい)錦綺(きんき)(うづたか)し。(はい)ありて(いは)周夷王所賜(しうのいわうたまふところ)錦三百端(にしきさんびやくたん)と。(した)(また)(たな)ありて金銀(きんぎん)珠玉(しゆぎよく)()れり。西(にし)(ばう)には漆器(しつき)あり。蒔繪(まきゑ)(あらた)なるものの(ごと)し。さて(その)(きた)(ばう)にこそ、(たま)()(かざ)りたる(ひつぎ)ありけれ。(うち)一人(いちにん)玉女(ぎよくぢよ)あり。()けるが(ごと)し。(みどり)(かみ)(かつら)(まゆ)皓齒(かうし)(あたか)河貝(かばい)(ふく)んで、優美(いうび)端正(たんせい)()(いへど)(およ)ぶべからず。(むらさき)の《かけ》、(ぬひ)ある《したうづ》、(たま)(くつ)をはきて()しぬ。香氣(かうき)一脈(いちみやく)芳霞(はうか)靉靆(たなび)く。いやな(やつ)あり。()(もつ)()(はだへ)()るゝに、(なめら)かに(しろ)(あぶら)づきて、(なほ)(あたゝか)なるものに()たり。

 (ひつぎ)(まへ)銀樽(ぎんそん)一個(いつか)兇賊等(きようぞくら)(あらそ)つてこれを()むに、(あま)(かんば)しきこと人界(じんかい)(ぜつ)す。錦綵寶珠(きんさいはうじゆ)賊等(ぞくら)やがて(こゝろ)のまゝに取出(とりい)だしぬ。さて()るに、玉女(ぎよくぢよ)(ひだり)()のくすり(ゆび)(ちひ)さき(たま)()()めたり。()(ほり)(たくみ)なること、()(ひと)()(つく)るべきものにあらず。いざや、と(これ)()かんとするに、(ゆる)(やはら)かに、(ほそ)(しろ)くして、(しか)()くこと(あた)はず。頭領陽知春(とうりやうやうちしゆん)(せい)して(いは)く、わい()(それ)()せと。小賊(せいぞく)()かずして、(すなは)(かたな)()つて()(ゆび)()つて(たま)(ぬす)むや、(ゆび)より(くれなゐ)()()(いと)(ごと)(ほとばし)りぬ。頭領(とうりやう)(おもて)(そむ)けて(いは)く、於戲痛哉(あゝいたましいかな)

 (つか)()でんとするに、()あり、(いなご)(ごと)()ぶ。南房(なんばう)人形氏(にんぎやうし)矢繼早(やつぎばや)()(ところ)小賊(せうぞく)(みな)(たふ)る。陽知春(やうちしゆん)一人(いちにん)のみ(いのち)(まつた)うすることを()て、()()たる寶貝(はうばい)(こと/″\)くこれを(つか)(かへ)す。(くわん)(また)(のち)(かれ)(ゆる)しつ。軍士(ぐんし)(つか)はし(つか)(をさ)む。其時(そのとき)銘誌(めいし)(たづ)ぬるに()ることなく、()(つか)たるを()らずと()ふ。

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