36話 十月三十日
読み方を変える
「光」の原稿を御持参なさって、みえる。
私も、かわらなければいけない。
沈黙の時間の意味は
一つの責任
一人のときでも自分が現せなくては
何か御考えなさった御様子
気持ちが落ちつかなくて外へ出てみる。同じ歩どりを踏む心でお家のお近くまで行く。
寂しい気持ち。饗宴の名残りの桜をみつけて手折る。悲しいものです。
この夏かぎり、もう二度と使うこともあるまいと思って買ったほおづきのお茶碗がまだ。そして家の近くで、こんなみじめな姿をした朝顔を、摘ませるなんて。
神様、でも、会話の中から感じない不安ではございませんでした。けれど、でも、凡人の想像なんて、当たらぬものでございましょうから、そうなくては生きられませんもの。信じてもいいらしいよ。らしい? いけなくなるかも分からないと仰言るのでしょうか。
たとえ一人で美しい旅に立つとしても、やっぱり信じて参ります。苦しい、悲しい中から、やっと見つけたお方なんですもの。渾沌とした世の中に生きてきたのですもの。せめて、私の美しい誇りだけは、夢でもいいから持たせていかせて下さいませ。
幸せを祈ります。お幸せで――
幸せを祈る美しい人
修治さん
私がこれだけのものしか持っていなかったのがいけなかったのです。自分がいけなかったのです。
「いい人間は尊い」
いい人間になりましょう。努力しましょう。尽くして倒れれば、天命です。
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お式の時
思い出に飾ってやって下さい、この写真の中から。
太宰さんの御写真を一枚一緒に入れて下さい。
埋めるときでも、焼くときでも。
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剛ちゃんへの御葉書
拝復、御手紙を拝見しました。
よいことをしたと思っています。
いい人間というものは、学問のある人間よりも、また才能のある人間よりも貴いものです。御自愛下さい。
私は君を、私の仕事の完成のためにもたよりにしているところがあるのです。
太宰 治