高野聖

14話 第十四

1,226字 約2分 2007年3月18日 公開

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「((いゝ)塩梅(あんばい)今日(けふ)(みづ)がふへて()りますから、(なか)(はい)りませんでも此上(このうへ)()うございます。)と(かう)(ひた)して爪先(つまさき)(かゞ)めながら、(ゆき)のやうな素足(すあし)(いし)(ばん)(うへ)()つて()た。

 自分達(じぶんだち)()つた(がは)は、(かへ)つて此方(こなた)(やま)(すそ)(みづ)(せま)つて、丁度(ちやうど)切穴(きりあな)(かたち)になつて、其処(そこ)()(いし)()めたやうな(あつらへ)川上(かはかみ)下流(かりう)()えぬが、(むか)ふの()岩山(いはやま)九十九折(つゞらをれ)のやうな(かたち)(ながれ)は五(しやく)、三(しやく)、一(けん)ばかりづゝ上流(じやうりう)(はう)段々(だん/″\)(とほ)く、飛々(とび/″\)(いは)をかゞつたやうに隠見(いんけん)して、いづれも月光(げつくわう)()びた、(ぎん)(よろひ)姿(すがた)()のあたり(ちか)いのはゆるぎ(いと)(さば)くが(ごと)真白(まツしろ)(ひるがへ)つて。

結構(けつこう)(ながれ)でございますな。)

(はい、()(みづ)(みなもと)(たき)でございます、此山(このやま)(たび)するお(かた)(みな)大風(おほかぜ)のやうな(おと)何処(どこ)かで()きます。貴僧(あなた)此方(こちら)被入(いら)つしやる(みち)でお心着(こゝろづ)きはなさいませんかい。)

 ()ればこそ山蛭(やまびる)大藪(おほやぶ)(はい)らうといふ(すこ)(まへ)から()(おと)を。

(あれ)(はやし)(かぜ)(あた)るのではございませんので?)

(いえ)(たれ)でも()(まを)します()(もり)から三()ばかり傍道(わきみち)(はい)りました(ところ)大瀧(おほたき)があるのでございます、()れは/\日本一(にツぽんいち)ださうですが(みち)(けは)しうござんすので、十(にん)一人(ひとり)(まゐ)つたものはございません。()(たき)()れましたと(まを)しまして丁度(ちやうど)(いま)から十三(ねん)(まへ)可恐(おそろ)しい洪水(おほみづ)がございました、恁麼(こんな)(たか)いところまで(かは)(そこ)になりましてね、(ふもと)(むら)(やま)(いへ)(のこ)らず(なが)れて(しま)ひました。()(かみ)(ほら)もはじめは二十(けん)ばかりあつたのでござんす、()(なが)れも其時(そのとき)から出来(でき)ました、御覧(ごらん)なさいましな、()(とほ)(みな)(いし)(なが)れたのでございますよ。)

 婦人(をんな)何時(いつ)かもう(こめ)(しら)()てゝ、衣紋(えもん)(みだ)れた、()(はし)もほの()ゆる、(ふく)らかな(むね)()らして()つた、(はな)(たか)(くち)(むす)んで()恍惚(うつとり)(うへ)()いて(いたゞき)(あふ)いだが、(つき)はなほ半腹(はんぷく)()累々(るゐ/\)たる(いはほ)()らすばかり。

(いま)でも()うやつて()ますと(こは)いやうでございます。)と(かゞ)んで二の(うで)(ところ)(あら)つて()ると。

(あれ、貴僧(あなた)那様(そんな)行儀(ぎやうぎ)()いことをして被在(ゐら)しつてはお(めし)()れます、気味(きみ)(わる)うございますよ、すつぱり裸体(はだか)になつてお(あら)ひなさいまし、(わたし)(なが)して()げませう。)

(いえ)、)

(いえ)ぢやあござんせぬ、それ、それ、お法衣(ころも)(そで)(ひた)るではありませんか、)といふと突然(いきなり)背後(うしろ)から(おび)()をかけて、身悶(みもだえ)をして(ちゞ)むのを、邪慳(じやけん)らしくすつぱり()いで()つた。

 (わし)師匠(ししやう)(きびし)かつたし、(きやう)()身体(からだ)ぢや、(はだ)さへ()いだことはついぞ(おぼ)えぬ。(しか)婦人(をんな)(まへ)蝸牛(まひ/\つぶろ)(しろ)()(わた)したやうで、(くち)()くさへ、()して手足(てあし)のあがきも出来(でき)背中(せなか)(まる)くして、(ひざ)()はせて、(ちゞ)かまると、婦人(をんな)()がした法衣(ころも)(かたはら)(えだ)へふわりとかけた。

(お(めし)()うやつて()きませう、さあお(せな)を、あれさ、じつとして。お嬢様(ぢやうさま)有仰(おつしや)つて(くだ)さいましたお(れい)に、叔母(をば)さんが世話(せわ)()くのでござんす、お(ひと)(わる)い、)といつて片袖(かたそで)前歯(まへば)引上(ひきあ)げ、

 (たま)のやうな二の(うで)をあからさまに背中(せなか)()せたが、(じつ)()て、

(まあ、)

()うかいたしてをりますか。)

(あざ)のやうになつて一(めん)に。)

(えゝ、それでございます、(ひど)()()ひました。)

 (おも)()しても悚然(ぞツ)とするて。」

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