危し‼ 潜水艦の秘密

1話 拾った暗号紙

565字 約1分 2022年7月20日 公開

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「何だろう、これは?」府立第×中学の校庭には、七月の真昼の陽(ひ)が照りつけていた。眼の眩(くら)むようなその陽ざしの中で、蹴球の猛練習に熱中している二年級の生徒が四五人、いまトラックの一隅にかたまって、一枚の紙片を取巻(とりま)きながら盛(さかん)になにか議論していた。

「なんだ下らない、出鱈目書(でたらめがき)だよ」

「だが、暗号文らしいぜ」

「暗号なら春田(はるた)に見せてやれ。彼奴(あいつ)人間の作った暗号なら、どんな物でも解いて見せると威張っていたじゃないか」

「そうだ春田に見せて困らせてやれ」皆は口々にそう囃(はや)したてながら、紙片を持って、校舎の方へ走っていった。そして藤棚の下で春田龍介(りゅうすけ)君がやってくるのに出会った。

「春田君、君はいつか人の作った暗号文ならどんな物でも解いてみせるといったね」春田君は濃い眉を神経質に動かしながら、しっかり頷いたきりで黙って微笑(ほほえ)んでいる。

「よし、じゃあこれを解いて見たまえ」

 春田君は友達から紙片を受けとると、よく見もせずに――「明日の練習時間までに解いてくるよ」と無造作にいったまま、すたすたと向うへ去っていった。皆は思わず、

「がっちりしているなあ」と呻(うめ)いた。

 春田龍介は二年級の級長をしていた。お父様の春田博士(はかせ)は大学の物理の教授で、その感化もあったのであろう。龍介君は学校中での秀才、頭の良さといったら春田君の質問には、先生でも時々答えにつまるくらいだった。

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