我輩は何故いつまでもすべてに於て衰えぬか

4話 気を以て身を御す

587字 約1分 2018年2月16日 公開

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 我輩は好んで聴き、好んで見、好んで読む。それを一々記憶している訳には行かぬが、他日そうという事柄に出会った時にふと思い出して、それが甚だ役立つ事がある。別に我輩に於て、聴き方、見方、読み方の異ったものはない。なるべく要点を(つま)んで記憶する様に勉めている。数字などの事になると初めに大別し、更に細別して比較を取ってみておくと、甚だ記憶に便利である。例えば世界の一年の商売高が五百億あるとすると、この中英吉利(イギリス)が幾ら、亜米利加(アメリカ)幾許(いくばく)、日本が幾らという事を見、更に亜米利加(アメリカ)は日本の何倍に当り、英吉利(イギリス)亜米利加(アメリカ)と幾らの差があるというような事を考え、それからまた十年前とか二十年前とかと比較を取ってみる。こうすると記憶にはっきり印象を与える。また歴史などもそうだ。まずずっと見渡すと中に幾つかの段落がある。それを始めに呑込んで、次に細に入り、更に段落と段落とを比較してその変化の有様を観察しておくと面白い。体力の養成については規則的に行動している外、別になんらの方法も取っておらぬ。冬は六時、夏は五時には必ず起き、夜はなるべく安眠する方針である。稀には夜更(よふか)しをしても、朝は我慢して所定の時間には起床する。冷水浴も今はやってはおらぬ。要するに我輩は気を以て身体を御する主義であるのである。心配して色々の養生法をやっている人があるが、そう心配しては(かえ)って身のために(よろ)しくないと思うのである。

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