ノベリズ
呼子と口笛
160字 約1分 2008年6月26日 公開
一九一一・六・一六・TOKYO
わが友は、古びたる鞄(かばん)をあけて、
ほの暗き蝋燭(らふそく)の火影(ほかげ)の散らぼへる床に、
いろいろの本を取り出(い)だしたり。
そは皆この国にて禁じられたるものなりき。
やがて、わが友は一葉の写真を探しあてて、
‘これなり’とわが手に置くや、
静かにまた窓に凭(よ)りて口笛を吹き出(い)だしたり。
そは美くしとにもあらぬ若き女の写真なりき。
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