11話 十一 今度の革命は出来損ねたり
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支那の現状はもはや如何ともするなく、如何なる智者も識者もこれを能く救うものはあるまい。古来支那は武を以て統一した国だ。然るに今度の革命は如何か。二百五十年の満州朝廷は何に因って破れたかというに、武を以てではない。単に巧妙なる策略を以てである。即ち満州政府も失敗すれば革命党もまた失敗し、その中間なる袁が成功して主権者となり総統となった。かくまで巧みなる成功は従来の歴史になきところ、即ちこの点より言えば、袁総統の手腕たる凄まじというべきだ。他国民たる我輩はそれ以上立ち入って是非を加えない。ただ支那従来の謬想を一洗して、十分国費を支弁し得るだけの税を取り、現代的の国家を組織して自国の安立を計り得るものであれば宜い。ところが袁総統にはそれがない。袁総統は策略を以て国を取り得たけれども、策略を以て税を取り得ない。税を取るには非常なる中央の威力が無ければならぬが、袁政府にはそれがない。これその国力の甚だ薄弱なるゆえんである。
第一、支那の今日を見るに、収税官がおらぬ。収税の能力ある官吏がおらぬ。その証拠には支那の官吏の手に任せた時には塩税が十分取れなかったが、今度五ヵ国の承諾を得て、英国から官吏を派してその収税を監督させたら、これが頗る機敏な人で、その結果意外の収入がある。第二、借款は何を担保に起すかというに、この塩税の増収に因る。初めは二億五千万の借款の担保たるを値すれば足ると思ったのであったが、今度その増収を見た結果は更になお五億万の担保たり得る事が知れた。恐らくはまた二億五千万くらい貸す事となるであろう。列国は担保さえあれば幾ら金を貸しても宜いのだ。塩税にしてすでに然りとすれば、支那より六億や七億の税を取るは易々たる事と思う。かつて総税務司のロバート・ハート氏の支那政府に告げたところは、重なるものを地税として六、七億の税を徴収するに在った。が、能く調査したならかの大国の事であるから、十億万くらいは取って取れぬ事はなかろうと思う。税法さえ具わり、それに才能ある官吏さえあれば宜い。能吏があっても、それが中間に自分のポケットに多く収むる様ではまたいかぬ。けれどもこれは支那国民旧来の悪俗であるから、一朝にして改め難いものがある。それ故善良なる習慣を作るまで、暫く十分の報酬を官吏に与えてそれに満足させ、同時に一方に規律ある軍隊、警察を置き、馬賊も白狼匪も全然閉息する底の力を備うべきである。国民の安寧秩序を守るだけの十分な威力が備われば、他の貪官汚吏を戒むるくらいの事はなんでもない。これくらいの事は元々革命の武力を以てすれば容易なるべきはずであったが、如何せん、支那の革命は出来損なったのである。ここに至れば何としても外国の力を借らなければならぬ。