7話 前編 生涯 七 助手
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それで、一八一三年三月一日より助手になった。俸給は一週二十五シリング(十二円五十銭)で、なお協会内の一室もあてがわれ、ここに泊ることとなった。
どういう仕事をするのかというと、王立協会の幹事との間に作成された覚書の今に残っているのによると、「講師や教授の講義する準備をしたり、講義の際の手伝いをしたり、器械の入用の節は、器械室なり実験室なりから、これを講堂に持ちはこび、用が済めば奇麗にして元の所に戻して置くこと。修理を要するような場合には、幹事に報告し、かつ色々の出来事は日記に一々記録して置くこと。また毎週一日は器械の掃除日とし、一ヶ月に一度はガラス箱の内にある器械の掃除をもして塵をとること。」というのであった。
しかしファラデーは、かような小使風の仕事をするばかりでなく、礦物の標本を順序よく整理したりして、覚書に定めてあるより以上の高い地位を占めているつもりで働いた。
ファラデーが助手になってから、どんな実験の手伝いをしたかというに、まず甜菜から砂糖をとる実験をやったが、これは中々楽な仕事ではなかった。次ぎに二硫化炭素の実験であったが、これは頗る臭い物である。臭い位はまだ可いとしても、塩化窒素の実験となると、危険至極の代物だ。
三月初めに雇われたが、一月半も経たない内に、早くもこれの破裂で負傷したことがある。デビーもファラデーもガラス製の覆面をつけて実験するのだが、それでも危険である。一度は、ファラデーがガラス管の内に塩化窒素を少し入れたのを指で持っていたとき、温いセメントをその傍に持って来たら、急に眩暈を感じた。ハッと意識がついて見ると、自分は前と同じ場所に立ったままで、手もそのままではあったが、ガラス管は飛び散り、ガラスの覆面も滅茶滅茶に壊われてしまっておった。
またある日、このガスを空気ポンプで抽くと、静に蒸発した。翌日同じ事をやると、今度は爆発し、傍にいたデビーも腮に負傷した。
かようなわけで、何時どんな負傷をするか知れないのではあるが、それでもファラデーは喜んで実験に従事し、夕方になって用が済むと、横笛を吹いたりして楽しんでおった。