14話 だんだら怪人
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大洋丸の沈んでいる海底には、魚形潜航艇がゆうゆうと泳ぎまわっていました。その背中には、やっぱり、鉄の人魚がうずくまっています。この怪物は、潜航艇の上部のガラス窓から、中の手下たちにさしずをしているのでしょう。まるで将軍が馬にまたがるように、潜航艇にまたがっているのです。
そこへ、ふいに水がさわいで、上の方から、スーッと大きな黒いものがおりてきました。明智の潜航艇です。この潜航艇は遊覧用のものですから、前と横とに、あついガラスの窓がついています。その窓から艇内の電灯の光がもれているのです。それを遠くから見ると、へんなところに三つ目のある怪物のようです。
鉄の人魚はそれに気づくとギョッとしたように、身がまえをして、じっとその方をにらんでいます。
潜航艇は魚形艇とおなじ深さまで沈むと、そこにとまって、いきなり、艇内の電灯をパッパッと、つけたり消したりしはじめました。そのたびに、三つのガラス窓が、またたきでもするように、暗くなったり、明るくなったりするのです。
これは、明智探偵にいいつけられたとおり、光によるモールス信号を発しているのです。トン・トン・ツーという、あの電信のモールス信号を、光によって、やっているのです。怪物団の方にも、モールス信号ぐらい、わかるやつがいるだろうと、それをためしているのです。
すると、魚形潜航艇の二つの目が、パチパチとまたたきはじめました。モールス信号が、わかるという答えです。そこで、こちらは、ほんとうの通信をおくりました。
「スグニココヲ、タチノケ、タチノカナケレバ、スイライヲ、ハッシャスルゾ」
水雷なんかもっていないのですが、こちらは海軍の潜航艇とおなじかたちですから、そういえば、敵はおどろくにちがいないのです。
あんのじょう、魚形潜航艇は動きだしました。大洋丸のそばをはなれて、どこかへにげていくのです。
こちらは、すかさず、それを追っかけます。二せきの小型潜航艇は海底競走です。二つ目玉の小クジラを追う、三つ目の怪物、それの通過するみち、海水はさかまき、さかなどもは、はねとばされ、長い海草は、あらしにふきつけられたように、みだれさわぎ、すさまじい海の底の追っかけっこです。
明智の方の潜航艇は、なんといっても遊覧用ですから、それほどの速力はありません。ざんねんながら、魚形艇の速力には、かなわないのです。だんだん、あいだがへだたっていくばかりでした。
そして、五分ほど追っかけているうちに、あいてを見うしなってしまいました。あいては、二つ目玉のようなヘッドライトを消したのです。そして、海の底の暗やみにまぎれて、どこかへ見えなくなってしまったのです。こちらの操縦士たちは、なんだか敵が、パッとかきけすように見えなくなったような気がしました。忍術でもつかったようなかんじでした。しかしともかく、敵を追っぱらったのですから、あとは、大洋丸のまわりをぐるぐるまわって、けいかいさえしていればよいのです。そこで、ハヤブサ丸の明智探偵に、無電をうちました。
「テキテイモ、テツノニンギョモ、ニゲサッタ、ホンテイハ、フキンノ、ケイカイニアタル、スグ、センスイフヲイレヨ」
その無電をうけたハヤブサ丸では、ちゃんと用意をしてまっていた、ひとりの潜水夫を、すぐに大洋丸へと、もぐらせました。いちばん、うでききの潜水夫です。
右手に鉄棒、左手に水中電灯をさげた潜水夫は、一度はいったことのある船室へと、ハッチをくだっていきました。鉄の人魚はにげさったというのですから、なにもこわいものはありません。金塊のありかさえ、さがしだせばよいのです。
水中電灯をふりてらしながら、広い船室の中をあちこち見まわっていますと、一方の壁に、大きな四角な穴があいているのに気づきました。「おやっ。」と思って、よく見ると、貝がらがいっぱいついていて、よく見わけられなかったのですが、そこにドアがあって、それがひらいていたのです。
ひとりでにひらくわけはありません。何者かが、じぶんよりさきにきてドアをひらいたのです。潜水夫はそこまで考えると、ギョッとして、たちすくんでしまいました。鉄の人魚は、もういないはずです。では、何者がひらいたのでしょう。
それとも、もしかしたら、怪物団のやつが、ここをひらいて、とっくに金塊をぬすみだしてしまったのではないでしょうか。いずれにしても一大事です。かれはそれをたしかめるために、電灯をふりかざして、そっと、ドアのむこうを、のぞいて見ました。
すると、その小さい部屋の中に、ぼんやりと光っているものがあるのです。水中電灯が、部屋の床においてあるのです。ハッとして、なおよくみると、おお、そこには、じつに気味のわるいへんなやつが、うごめいていたではありませんか。
そいつは人間のかたちをしていました。しかし、ふつうの人間ではありません。からだじゅうに、太いまっ黒なしまがあるのです。白黒ダンダラぞめの怪物です。美しいしまのあるタイがいますね。あれとそっくりのダンダラぞめの怪人です。
顔は人間ですが、まるでゴリラみたいな、おそろしいやつです。その顔が、ガラスでもかぶせたように、ギラギラ光って、それから、頭のうしろに、まっ黒なギザギザのトサカみたいなものがついているのです。足の先にはアザラシのヒレのような大きな水かきがついています。
その怪物が、ひとつの木の箱を、こわきにかかえて、ひょいとこちらをむきました。そのうしろの、壁ぎわには、おなじような木箱が、うすだかくつんであります。
「ああ、わかった。金塊はここにあったのだ。この木の箱にいれて、ここにつんであったのだ。」
潜水夫は、とっさに、それをさとりました。ダンダラぞめの怪物は、やっぱり金塊どろぼうだったのです。潜水夫は潜水カブトの中の電話口にむかって、どなりました。
「金塊どろぼうを見つけました。ダンダラぞめの怪物です。ひっとらえてやります。すぐ応援をよこしてください。」
そうどなっておいて、かれはいきなり、ダンダラ怪人に、つかみかかっていきました。