灰色の巨人

17話 おばけ玉

2,333字 約5分 2017年7月13日 公開

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 そこで、小林団長は二十人の団員を十人ずつふたくみにわけ、ひとくみの十人には、八幡神社の森の中を見はらせることにしました。宝冠の少女が、森のどこかにかくれていて、こっそり逃げだすといけないからです。のこる十人を、また五人ずつ、ふたくみにわけました。そして、ひとくみの五人には、サーカスの大テントの前に、いろいろな動物がならべてある中の、クマのおりの見はりを命じました。その鉄棒のはまったおりの中には、曲芸をする大きなクマがはいっているのです。なぜ、クマのおりを見はらせたか、そのわけは、やがてわかります。

 小林団長と園井少年は、さいごの五人のひとくみの中にのこりました。そして、大テントの曲芸場から、がくやへ出入りするカーテンのところへ集まりました。

 小林君はさきに立って、大きなカーテンをまくり、がくやの通路へはいっていきました。通路の両がわには、曲芸に使ういろいろな道具がおいてあります。

 その中に、「玉のり」の大きな玉が五つころがっていました。土でできた重い玉で、白と赤のだんだらぞめになっています。その上に曲芸師の少女がのって、足でクルクルまわしながら歩きまわる、あの玉です。

「おや、ひとつだけ、でっかい玉があるね。巨人の玉だね。」

 ひとりの少年が、五つの玉の中の、ひとつをゆびさしていいました。それだけが、直径八十センチもある、大きな玉なのです。

「これは、きっと、女の子じゃなくて、おとながのるんだよ。あの大男の道化師が、のるのかもしれないね。」

 べつの少年がいいました。みんなが「灰色の巨人」のことを、考えているものですから、「巨人」とか「大男」とかいうことばが、つい口にでるのです。

 小林団長は、そのとき、くちびるにゆびをあてて、みんなにだまるように、あいずをしました。そして、その大きな玉のそばへ近よると、両手で玉を動かしながら、なにかしらべようとしました。

 すると、ふしぎなことがおこったのです。小林君が、ちょっと動かした玉が、そのまま止まらないでゴロゴロころがりはじめました。まるで、いきもののように、ひとりで、むこうのほうへ、ころがっていくのです。

 少年たちは、それを見ると、びっくりして、立ちすくんでしまいました。

 そこは、べつに、坂になっているわけではありません。ひとりでころがるどうりがないのです。しかも、玉のころがる速度が、だんだん早くなっていくではありませんか。

 おばけ玉です。

 少年たちは、「ワーッ。」といって、逃げだしそうになりました。

 しかし、小林団長だけは逃げるどころか、そのおばけ玉を、追っかけて走りだしました。

「おい、みんな、追っかけるんだ。あの玉を、追っかけるんだ。」

 団長の命令とあっては、逃げるわけにもいきません。少年たちは、団長のあとについて、おばけ玉のあとを追いました。

 玉は、カーテンの外の、曲芸場の砂場へ出て、そのまん中にある、大きなまるい板ばりのぶたいへ、ころがっていきました。この板ばりの上で、いつも「玉のり」が、えんじられるのです。

 白と赤のだんだらぞめの大きな土の玉は、まるで、目に見えぬ人間がその上にのってでもいるように、右に左に、ゴロゴロ、ゴロゴロ、板ばりの上をころげまわりました。

 少年たちは、このふしぎなおにごっこに、だんだん元気づいて、いまは、「ワーッ。ワーッ。」と、ときの声をあげながら、おばけ玉を追っかけまわすのです。

 ほんとうに、おにごっこでした。玉は、逃げよう、逃げようとする。少年たちは、逃がすまいと、さきまわりをして、とおせんぼうをする。そして、とうとう、おばけ玉は、少年たちに、四方から取りかこまれ、おさえつけられて、もう動けなくなってしまいました。

 すると、そのとき、じつに、とほうもないことが、おこったのです。少年たちは、「ワーッ。」とさけんで、玉のそばから、とびのきました。

 ごらんなさい! 土の玉が、まっぷたつに、われたのです。そして、モモの中から桃太郎がとびだすように、その玉の中から、へんなやつがとびだしてきたのです。

 でっかい頭に赤白の運動帽をかぶり、赤いジャンパーに、はでなしまズボン、顔はおとなで、からだは子どもみたいなやつです。

「あっ、一寸法師だっ。」

 それは、宝冠をぬすみ出した一寸法師でした。土の玉の中が、くりぬいてあって、そこが一寸法師のかくればになっていたのです。玉が、ひとりでころがったわけも、これでわかりました。小林団長が、ポケットから、よびこの笛を出して、ピリピリリッ……と、ふきならしました。

 すると、ライトのむこうの方から、明智探偵と、中村警部と、数名の警官が、かけつけてきました。そして、一寸法師は、なんなく、つかまってしまったのです。

「おてがら! おてがら! さすがは少年探偵団だね。よく一寸法師を、さがしてくれた。」

 中村警部が、ニコニコして、少年たちのてがらをほめました。

「これで、ひとりはつかまったが、あとにまだ、ふたりいる。小林君、しっかりやるんだよ。」

 明智探偵が、小林団長のかたをたたいて、はげますのでした。明智は、じぶんがやれば、なんでもないのですが、こういうときに、小林君や少年団員たちに、じゅうぶん、てがらをたてさせてやろうと考えていたのです。

 そのとき、ひとりの警官が走ってきて、中村警部に、ほうこくしました。

「あちらのオートバイ曲芸のおけの中に、クマがおちこんでいます。くさりをきって、逃げたらしいのです。」

 それをきくと、「よしっ。」といって、明智探偵は、そのほうへ、かけだしました。小林君や少年団員たちも、そのあとにつづきます。中村警部と数名の警官は、一寸法師をとりかこんで、もとの場所に、のこっていました。

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