小桜姫物語 03 小桜姫物語

64話 六十一、海の修行場

1,088字 約2分 2012年10月9日 公開

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 (まえ)にも申上(もうしあ)げた(とお)り、(わたくし)(たき)修行場(しゅぎょうば)()りました期間(きかん)割合(わりあい)(みじ)かく、(また)これと()って(めず)らしい(はなし)もありませぬ。(わたくし)大体(だいたい)彼所(あそこ)でただ統一(とういつ)修行(しゅぎょう)ばかりやっていたのでございますから……。

 (たき)修行時代(しゅぎょうじだい)がどれ(くらい)つづいたかと()っしゃるか……。さァ自分(じぶん)にはさっぱりその見当(けんとう)がつきませぬが、指導役(しどうやく)のお(じい)さんのお(はなし)では、あれでも現世(げんせ)の三十(ねん)(くらい)には(あた)るであろうとの(こと)でございました。三十(ねん)(もう)すと現世(げんせ)ではなかなか(なが)歳月(つきひ)でございますが、こちらでは(とき)(はか)標準(めあて)()(せい)か、一(こう)それほどにも(かん)じないのでございまして……。

 それはそうと、(わたくし)(たき)修行場(しゅぎょうば)生活(せいかつ)もやがて(おわ)りを()ぐべき(とき)がめぐってまいりました。ある()(わたくし)御神前(ごしんぜん)(ふか)(ふか)統一(とういつ)(はい)って()りますと、ひょっくり(たき)竜神(りゅうじん)さんが、(れい)白衣姿(びゃくいすがた)ですぐ間近(まじか)くお(あら)われになり、()(おお)せられるのでございました。――

『そなたの統一(とういつ)もその(へん)まで(すす)めば()大丈夫(だいじょうぶ)大概(たいがい)仕事(しごと)差支(さしつか)えることもあるまい。(したが)ってそなたがこの(うえ)ここに()必要(ひつよう)もなくなった(わけ)……ではこれでお(わか)れじゃ……。』

 ()いも(おわ)らず、プイと姿(すがた)をお()しになり、そしてそれと()(かわ)りに(わたくし)指導役(しどうやく)のお(じい)さんが、いつの()にやら(れい)(なが)(つえ)をついて入口(いりぐち)()って()られました。

 (わたくし)はびっくりして(たず)ねました。――

『お(じい)さま、これから何所(どこ)ぞへお引越(ひきこし)でございますか?』

『そうじゃ……今度(こんど)修行場(しゅぎょうば)はきっと(そち)()()るぞ……。すぐ出掛(でか)けるとしよう……。』

 不相変(あいかわらず)あっさりしたものでございます。しかし、(わたくし)(ほう)でも近頃(ちかごろ)はいくらかこちらの世界(せかい)生活(せいかつ)()れてまいりましたので、格別(かくべつ)(おどろ)きも、(あや)しみもせず、ただ(はは)紀念(かたみ)守刀(まもりがたな)()につけた(だけ)で、心静(こころしず)かに()()ちました。

 が、それにつづいて(おこ)った局面(きょくめん)急転回(きゅうてんかい)には、さすがの(わたくし)(すこ)(あき)れない(わけ)にはまいりませんでした。お暇乞(いとまご)いの()めに(わたくし)(たき)竜神(りゅうじん)さんの祠堂(ほこら)(むか)って合掌(がっしょう)瞑目(めいもく)したのはホンの一瞬間(しゅんかん)、さて()()けると、もうそこはすでに(たき)修行場(しゅぎょうば)でも(なん)でもなく、一(ぼう)()大海原(おおうなばら)(まえ)にした、素晴(すば)らしく見晴(みは)らしのよい(おお)きな(いわ)頂点(てっぺん)に、(わたくし)とお(じい)さんと(なら)んで()っていたのでした。

『ここが今度(こんど)(そち)修行場(しゅぎょうば)じゃ。()うじゃ()()ったであろうが……。』

 びっくりした(わたくし)御返答(ごへんじ)をしようとする()もあらせず、お(じい)さんの姿(すがた)又々(またまた)(けむり)のように(そば)から()えて()くなって(しま)いました。

 (かさ)(がさ)ねの早業(はやわざ)に、(わたくし)()いた(くち)容易(ようい)(ふさ)がりませんでしたが、(ようや)()()ちつけて四辺(あたり)景色(けしき)(みま)わした(とき)に、(わたくし)()たび(おどろ)かされて(しま)いました。何故(なぜ)かと(もう)すに、(いわ)(うえ)から見渡(みわた)す一(たい)景色(けしき)が、どう()ても昔馴染(むかしなじみ)三浦(みうら)西海岸(にしかいがん)何所(どこ)やら似通(にかよ)って()るのでございますから……。

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