赤いカブトムシ

6話

1,937字 約4分 2016年9月30日 公開

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 ユウ子ちゃんは、まほうはかせにうまくだまされて、赤いカブトムシのかくしばしょを見つけられてしまいました。

 そこは、さびしい原っぱですし、あい手はおとなのまほうはかせ。こちらは、小さい子どもですから、どうすることもできません。とうとう、ルビーのカブトムシを、とりあげられてしまいました。

「さあ、こんどは、きみたちがさがす番だよ。わしが、このカブトムシを、ふしぎなばしょへかくすからね。うまく見つけ出してごらん。

 は、は、は、は……。かわいそうに、なきべそをかいているね。よしよし、それじゃ、かくしばしょのひみつを、きっと、きみにおしえてあげるよ。まっているがいい。」

 まほうはかせは、そういって、どこかへたちさってしまいました。

 それから三日めの、おひるすぎのことです。ユウ子ちゃんが、うちのにわであそんでいますと、赤いゴムふうせんが、空からふわふわとおちてきました。

 どこかの子どもが、ふうせんの糸をはなして、空へとび上がったのが、力が弱くなっておちてきたのでしょう。

 ユウ子ちゃんがそう思って、赤いふうせんをじっと見ていますと、やがてそれは、すぐ目の前のじめんにおちました。

 ふうせんには糸がついていて、その糸のはしに、白いものがくくりつけてあります。ユウ子ちゃんは、なんだろうと思って、それをひろってしらべてみました。

 それは、紙をこまかくおりたたんだものでした。ていねいにのばしてみると、その紙には、こんなへんなことが書いてあります。

五月二十五日午後三時二十分、一本スギのてっぺんからはいれ。おそろしい番人に注意せよ。

まほうはかせ

「あらっ、まほうはかせからの手紙だわ。」

 ユウ子ちゃんは、むねがどきどきしてきました。

 まほうはかせは、このあいだのやくそくをまもって、ユウ子ちゃんに、カブトムシのかくしばしょをおしえてくれたのかもしれません。

 ユウ子ちゃんは、すぐにその紙をもって、電車に乗って麹町(こうじまち)の明智たんていじむしょをたずね、小林しょうねんにそうだんしました。

「五月二十五日といえば、あさってだね。あさって、一本スギのところへ行けばいいんだね。一本スギって、なんだか聞いたことがあるよ。あっ、そうだ。木村敏夫くんの家のそばの、まほうはかせのばけものやしきのむこうに、たしか、一本スギっていうのがあった。木村くんに、でんわで聞いてみよう。」

 でんわをかけますと、やっぱりそこに、一本スギという、高いスギの木があることがわかりました。

 そして、五月二十五日午後三時に、小林くんたち五人のだんいんが、一本スギのある原っぱへやって来ました。

 五人というのは、小林だんちょうとユウ子ちゃんと、木村敏夫くんと、それから、だんいんの中でいちばん力の強い井上一郎(いのうえいちろう)くんと、野呂一平(のろいっぺい)くんでした。一平くんは、ノロちゃんというあだ名で、おくびょうものだけれども、すばしこくて、よく気のつく子でした。

「一本スギのてっぺんからはいれって、どういういみだろう。」

 小林くんがくびをかしげていますと、ノロちゃんが、とんきょうな声で、

「きっと、てっぺんにあながあいているんだよ。そこからはいるんだよ。ぼく、のぼってみようか。」

といって、こしにまきつけていた長いなわをほどき始めました。

 ノロちゃんは、木のぼりのめいじんで、きょうは、スギの木にのぼらなければならないだろうと思って、そのよういをしてきたのです。

 ノロちゃんは、なげなわもじょうずでした。その長いなわを、くるくるとまわして、ぱっとスギの木の高いえだになげかけました。そして、一方のはしを、自分のからだにしばりつけ、一方のはしを、みんなにひっぱってもらうのです。

 つなひきみたいに、みんながなわをひっぱると、ノロちゃんはそれを力にして、ふといスギのみきを、するするとのぼっていきました。

 そして、下のえだまでのぼりつけば、あとは、えだからえだへとつたっていけばいいのです。

 ノロちゃんは、とうとう、スギの木のてっぺんまでたどりつきました。

 そして、しばらくそのへんをさがしていましたが、

「なんにもないよう。あななんて、どこにもあいていないよう。」

とさけぶ声が、はるかにきこえました。これは、どうしたわけでしょう。

「てっぺんからはいれ。」といったって、あながなければ、はいれないではありませんか。

 ノロちゃんは、五分ほども木のてっぺんで、じっとしていましたが、やがて、なにを思ったのか、とんきょうな声で、

「わかったよう。あれだよう、あれをごらん。」

とさけんで、原っぱの一方をゆびさしてみせるのでした。そこには、たいようの光をうけて、一本スギのかげが、長々とよこたわっていました。

 みなさん、ノロちゃんは、いったいなにに気づいたのでしょうか。

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