2話 2
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しょうねんたんていだんの井上くんと、ノロちゃんと、井上くんの妹で、小学校三年のルミちゃんの三人が入れられたへやが、まっさかさまになったのです。いままでたっていたところがてんじょうになってしまったので、三人は、「わっ」といって、つくえの足にしがみつきました。
ところが、ふしぎなことに、さかさまになっても、つくえもいすも、子どもたちも、てんじょうにくっついたまま、すこしもおちないのです。へんだなと思っていると、へやはまた、ぐるぐるまわり始めました。もう目がくらんで、いまにも死にそうです。
そのうちに、へやのゆれるのがだんだんしずまって、やがて、ぴたりととまりました。三人は、きゅうに起き上がる力もありません。そのとき、へやの一方のドアがすうっとあいて、人の声がきこえてきました。
「うふふふ……。おどろいたかね。早く、こっちへ来なさい。でないと、またへやがまわりだすよ」
三人はそれを聞くと、びっくりして起き上がりましたが、足がふらふらして歩けません。なん度もころびながら、ようやくドアの外へ出ました。
そこはまっ暗でした。そのやみの中に、ぽっと、二つの青い玉のようなものが光っています。
三センチほどのまるいものが二つならんで、ぎらぎらかがやいているのです。
「ふふふ……。見えるかね。これは、わしの目玉だよ」
そんな声がきこえたかと思うと、あたりがすうっと明るくなってきました。そのうす明りで見えたものは……。
ああ、そこにいたのは、一ぴきのおそろしいライオンでした。茶色の毛が、大きなかおの上にさかだって、二つの青い目がぎらぎらと光っています。
三人は、「わっ」といって、さっきのドアにとびつきましたが、いつのまにかぴったりしまって開きません。しかたがないので、へやのすみに、うずくまってしまいました。
「ウォーッ」ライオンが、おそろしい声でうなりました。そして、のっしのっしと、こちらへ近づいてきます。
「ウォーッ」また一声うなって、ライオンが、ぐゎっとまっかな口を開きました。三人は、あたまからくわれてしまうのではないでしょうか。
「わはははは……」
ふしぎ、ふしぎ。そのときライオンが、にんげんの声でわらいだしたのです。
「おまえたち、ここはまほうやしきだよ。だから、どんなふしぎなことでも起るのだ。さあ、見るがいい」
ライオンがぴょんととび上がってくるっとひっくりかえりました。
すると、ライオンのはらがまっ二つにわれて、そこから、さっきのせいようあくまの黒いすがたが、あらわれたではありませんか。にんげんが、ライオンの皮をかぶっていたのです。
「わははは……。どうだね。まだまだきみたちのびっくりするようなことが起るのだよ」
それから、せいようあくまは三人を二かいの一室にとじこめてしまいました。大きなベッドが一つおいてあって、三人にそこでねむれというのです。
そのへやには、鉄ぼうのはまった小さなまどが一つあるきりで、そこから月の光がさしこんでいました。
ノロちゃんは、井上くんのかたに乗って、まどから外をのぞいてみました。
まどのすぐ外に高いへいがあって、そのむこうは原っぱです。
「あっ、いいことがある。バッジを使えばいいよ」
ノロちゃんはとびおりて、井上くんにささやきました。すると、井上くんもにっこりわらって、ポケットからしょうねんたんていだんのきしょうのB・Dバッジを一つとり出しました。
それから、上着のポケットから手ちょうを出して、紙を一まいちぎり、えんぴつでなにか書いて、B・Dバッジをその中につつんでまるめました。ノロちゃんは、それを受けとると、また井上くんのかたにのぼって、まるめた紙玉を、力まかせに、まどの外へほうるのでした。
バッジは、ほうるときの重しになったのです。
あくる朝のことです。ノロちゃんが、ふと目をさまして、ベッドの上を見ますと、そこには井上くんもルミちゃんもいなくなって、二ひきのライオンの子どもが、ながながとねそべっていました。ノロちゃんは、「ぎゃっ」とさけんで、ベッドからとびおりましたが、そのとき、自分のからだを見て、きぜつしそうになりました。自分のからだにも、茶色の毛がいっぱいはえていたからです。