26話 言語道断 二十六
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「悪く思ってくれちゃあ困るよ、僕はね、知ってる通、遊ぶのはお前がはじめてだ。商売だから嘘を吐くもんだと思っていたんだけれども、お前が見ッともない、たというそにでも好いたとか、何とかいって、そうして好いた真似をして見せる分には、好かれた者に違いはないのだから、好かれたんだと思っておいでなされば可い。いやに疑るのは見っともない、男らしくもない、とそういうから、成程そうだと、自分極で、好かれてると思ってる。ああ、ずっと惚れられたんだと思って、これでも色男に成済しているんだ。だから、何も洗い立をして、どうの、こうのと、詮議立をするんじゃあないけれども、今来る途中で、松の鮨が、妙なことをいって当っ擦ったよ。」
「厭だ!」
蝶吉は閨を透見したものを、辱しめ、且つ自分のしどけなかったのを愧ずるごとき、荒ッぽい調子であったが、また自ら危んで、罪の宣告を促して弱々しく、
「何か言っていましたか。」
「残らず、」と神月はきっぱり言った。
「へい、」と真面目に、蝶吉はたちまち三ツばかりものの言いざまに年紀を取ったが、急に気を換えて、
「だって、すっかり快くなってよ。西洋じゃあ皆平気ですって。また田舎なんぞには当前だと思ってますとさ、私もうさっぱりしたんです。
体にも障らなかったといって、今夜ねえ、床上げやら、何やらで、内の姐さんが赤飯を炊いてくれました。そして一杯飲んだんですもの、祝ったくらいじゃあありませんか、不可くッて、え、え?」
蝶吉は梓が何か易からぬ面色があるのを見て、怪しむ様子。
梓は急に語も出でず腕を拱いて黙然としていた。
「よう、何を鬱ぐのよ、私のことなんですか、不可くッて、」
「可いも悪いもお前、」
言語道断だ。
「だってしかたがないじゃあありませんか、」と詮方なげに蝶吉はぱっちりした目を細うして、下目使いで莞爾したが、顔を上げてまじくりして、
「もっとも何なのよ。一度そんなことをしたものは、もうもう一生子供は出来ないッていうのよ。ですけれども、貴方嬰児はいらないんでしょう、ぎゃあぎゃあ泣いて可煩いから大嫌だって言ったじゃあありませんか。ですもの、三ツばかりの児が、父さん、母さんッて、生意気な口を利くのが可愛いんですから、余所から貰うことにでもしましょうッていったら、それさえ面倒だ、可愛い口を利かせるなら鸚鵡を飼えば沢山だッて言ったんですもの。」
梓呆れ果てて言葉なし。
蝶吉はしたり顔で、
「ほら、御覧なさいな、可いじゃあありませんか、私も嬰児なんか欲しくないんですから、」
と言い懸けて少し体を斜にして、秋波で男を見ながら指示すがごとく、その胸に手を当てた。
「こっちのお乳をお菜にして、こっちの大い方をお飯にして食べるんだって、」とぐッと緊め附けて肩を窄め、笑顔で身顫をして、
「厭、痛いわ!」