発明小僧

2話 発明小僧(2)

1,043字 約2分 2005年1月27日 公開

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 芋焼器の発明

 昭和五年実用新案広告第八八三四号(類別、第九十六類九、飲食物製造機雑)――出願人、山形市×澄町吹張、伊×長兵衛氏。

 この芋焼器の「作用と効果」というのが、実に名文で、一読(いちどく)、やき芋屋へ走りたくなるという御婦人方には極めて蠱惑的(こわくてき)なものである。(すなわ)ち――

 作用ト効果

 本考案品ハ右ノ如キ構造ニシテ加熱板上ノ金網面ニ、生芋ヲ置キテ、先ズ半蒸焼(はんむしやき)トナシ、後コレヲ取出シテ、適宜ニ切断シテ、塩ヲ散布シ、多孔板上(たこうばんじょう)ニ載置シテ完全ニ蒸焼ス。(しか)シテ金網面ニハ更ニ生芋ヲ入替(いれか)ウルモノトス。()クシテ完全ニ蒸焼サレタル芋ハ、蓋ヲ取去リテ取出シ、蓋ニ具ウル保温室内ニ常ニ保温セシメ置クモノナリ。

 以上ノ如クナルヲ以テ、芋ヲ焦焼スルコトナク(僕はいささか焦げた方が好きです)、蒸焼シ得ルノミナラズ蒸焼ヲ二回ニ順次行ウヲ以テ塩ノ浸滲(しんさん)ハ良好ニ行ワレ(とてもタマランです)、更ニ蓋ニ保温室ヲ設クルコトニヨリ之ヲ焼冷(やきざま)シトナスコトナカラシメ、常ニ保温シ得ル等ノ効果ヲ有ス。

 ――皆様、お腹の具合はいかがですナ。

 牛馬両便器の発明

 昭和二年実用新案広告第四二九四号(類別、第七十五類五、家畜用便器)――出願人、四谷区永住町、中×清氏。

 牛馬の両便と都市の美観衛生問題は、これ誰しも頭痛の種である。そこで此の発明が生れたわけである。

 図で見るように、ションの方は漏斗(じょうご)がたの受け器があって、これは牝牛(めうし)の場合に、適当な個所に於て、下から受けている。

 ジャアと用を達せば、この漏斗がたの中に落ち、底から出ている(くだ)を通って、タンクの中へ流れ込む。だから、美しい道路を汚すこともなく、地が掘れる心配もないというわけ。

 ダイの方は、手前に出ているハンドルを、キューッと矢の方に引張ると、クランクの巧みなる運動によって、(えび)のように曲った管の先についているダイの受け器が、クルリと廻って、適当なる下方に伸びて、ダイを受ける。

 受けたものはコロコロと、太い管の中を転落して、タンクの中に入るから牛馬先生は、遥かに余韻(よいん)嫋々(じょうじょう)たる風韻(ふういん)を耳にするであろう。

 ハンドルが間に合わぬことを心配する人があるかも知れないが、こいつは心配いらぬ。何故なら牛馬は用達(ようたし)を催すときには先ず急に止るから、そのとき直ぐハンドルを引張れば、十分間に合う。

 ――という誠に結構な仕掛けである。かくして牛馬君は、終日おのれの産物を引いて廻ることになる。

 さてこの折角の発明も、牛馬車がトラックに追われてしまった今日では、僅かに原稿のネタになるしか、その効果がなくなった。

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