教育と迷信

2話 二 わが国の現状

684字 約1分 2017年7月26日 公開

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 わが国は一度は清国と戦って勝ち、次には世界の強国なるロシアと戦って勝ち、今は一等国の中にかぞえられるようになった。しかしながら軍事以外の方面を英、米、独、仏等のごとき他の一等国と比較して見ると、いかにひいきめをもって見てもかれらに匹敵するとは言われぬ。いな二等国、三等国と言われる国々にくらべてさえはるかにおよばぬ点もはなはだ多い。物産について見ても、わが国の主要な輸出品は生糸、茶のごときほとんど天産物そのままのもので、他の一等国のごとき精巧な機械、薬品、工芸品ではない。外国人に見せて自慢(じまん)のできるものは、富士の山か瀬戸内海の景色か、ないしは芸者の手踊りくらいで、他の一等国のごとくに、完備した博物館もなければ、智力で造り上げた巧妙な製作品もない。内国博覧会を開いてももっとも評判にのぼるものは八千円の造花とか、一万円の刺繍(ししゅう)とか、単に根気を要する指先仕事ばかりで、文明を代表すべき機械館にはわずかに玩具にひとしい製麺機械が人を呼んでいるに過ぎぬ。かように数え上げれば際限がないほどに、今日のわが国には他の一等国に比して、とうてい足もとにもおよばぬほどに劣っている点が多い。しかしてその根源は何にあるかといえば、いずれも理科の知識の普及せぬこと、その応用の発達せぬことである。法律がいかに完備しても、文芸がいかに隆盛におもむいても、理科の知識が今日のごときありさまにとどまり、理科の応用が今日のままで進まなかったならば、今後のわが国はいかにして他の一等国と競争してゆくことができるであろうか。いささかでも国の将来を考える者は決して平然と安心しておられる次第ではない。

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