5話 トリスタン・コルビエェル 蟾蜍
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風の無い晩に歌がきこえる……
――月は黒ずんだ青葉の
曲折に銀を被せてる。
……歌がきこえる、生埋になつた
木精かしら、そらあの石垣の下さ……
――已んだ。行つて見よう、そこだ、その陰だ。
――蟾蜍よっ。――なにも恐い事は無い。
こつちへお寄り、僕が附いてる。
よつく御覽、これは頭を圓めた、翼の無い詩人さ、
溝の中の迦陵伽……あら厭だ。
……歌つてる――おゝ厭だ。――なぜ厭なの。
そら、あの眼の光つてること……
おや冷して、石の下へ潛つてく。
さよなら――あの蟾蜍は僕だ。