牧羊神

5話 トリスタン・コルビエェル 蟾蜍

225字 約1分 2011年2月20日 公開

読み方を変える
字の大きさ
行の間隔
1行の長さ
書体
配色
組み方

風の無い晩に歌がきこえる……

――月は黒ずんだ青葉の

曲折(ぎざぎざ)に銀を()せてる。

……歌がきこえる、生埋(いきうめ)になつた

木精(こだま)かしら、そらあの石垣の下さ……

――()んだ。行つて見よう、そこだ、その陰だ。

――蟾蜍(ひきがへる)よっ。――なにも(こは)い事は無い。

こつちへお寄り、僕が附いてる。

よつく御覽、これは(あたま)(まる)めた、(はね)の無い詩人さ、

(どぶ)の中の迦陵伽(かりようびんが)……あら厭だ。

……歌つてる――おゝ厭だ。――なぜ厭なの。

そら、あの眼の光つてること……

おや(すま)して、石の(した)(もぐ)つてく。

さよなら――あの蟾蜍(ひきがへる)は僕だ。

目次に戻る

目次