47話 アンリ・ドゥ・レニエ 愛の教
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いづれは「夜」に入る人の
をさな心も青春も、
今はた過ぎしけふの日や、
從容として、ひとりきく、
「冬篳篥」にさきだちて、
「秋」に響かふ「夏笛」を。
(現世にしては、ひとつなり、
物のあはれも、さいはひも。)
あゝ、聞け、樂のやむひまを
「長月姫」と「葉月姫」、
なが「憂愁」と「歡樂」と
語らふ聲の蕭やかさ。
(熟しうみたるくだものゝ
つはりて枝や撓むらむ。)
あはれ、微風、さやさやと
伊吹のすゑは木枯を
誘ふと知れば、憂かれども、
けふ木枯もそよ風も
口ふれあひて、熟睡せり。
森蔭はまだ夏緑、
夕まぐれ、空より落ちて、
笛の音は山鳩よばひ、
「夏」の歌「秋」を搖りぬ。
曙の美しからば、
その晝は晴れわたるべく、
心だに優しくあらば、
身の夜も樂しかるらむ。
ほゝゑみは口のさうび花、
もつれ髮、髷にゆふべく、
眞清水やいつも澄みたる。
あゝ人よ、「愛」を命の法とせば、
星や照らさむ、なが足を、
いづれは「夜」に入らむ時。