オツベルと象

2話 第二日曜

1,500字 約3分 1999年2月6日 公開

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 オツベルときたら大したもんだ。それにこの前稲扱小屋で、うまく自分のものにした、象もじっさい大したもんだ。力も二十馬力もある。第一みかけがまっ白で、牙(きば)はぜんたいきれいな象牙(ぞうげ)でできている。皮も全体、立派で丈夫(じょうぶ)な象皮なのだ。そしてずいぶんはたらくもんだ。けれどもそんなに稼(かせ)ぐのも、やっぱり主人が偉(えら)いのだ。

「おい、お前は時計は要(い)らないか。」丸太で建てたその象小屋の前に来て、オツベルは琥珀のパイプをくわえ、顔をしかめて斯う訊(き)いた。

「ぼくは時計は要らないよ。」象がわらって返事した。

「まあ持って見ろ、いいもんだ。」斯う言いながらオツベルは、ブリキでこさえた大きな時計を、象の首からぶらさげた。

「なかなかいいね。」象も云う。

「鎖(くさり)もなくちゃだめだろう。」オツベルときたら、百キロもある鎖をさ、その前肢にくっつけた。

「うん、なかなか鎖はいいね。」三あし歩いて象がいう。

「靴(くつ)をはいたらどうだろう。」

「ぼくは靴などはかないよ。」

「まあはいてみろ、いいもんだ。」オツベルは顔をしかめながら、赤い張子の大きな靴を、象のうしろのかかとにはめた。

「なかなかいいね。」象も云う。

「靴に飾(かざ)りをつけなくちゃ。」オツベルはもう大急ぎで、四百キロある分銅を靴の上から、穿(は)め込んだ。

「うん、なかなかいいね。」象は二あし歩いてみて、さもうれしそうにそう云った。

 次の日、ブリキの大きな時計と、やくざな紙の靴とはやぶけ、象は鎖と分銅だけで、大よろこびであるいて居(お)った。

「済まないが税金も高いから、今日はすこうし、川から水を汲(く)んでくれ。」オツベルは両手をうしろで組んで、顔をしかめて象に云う。

「ああ、ぼく水を汲んで来よう。もう何ばいでも汲んでやるよ。」

 象は眼を細くしてよろこんで、そのひるすぎに五十だけ、川から水を汲んで来た。そして菜っ葉の畑にかけた。

 夕方象は小屋に居て、十把(ぱ)の藁(わら)をたべながら、西の三日の月を見て、

「ああ、稼(かせ)ぐのは愉快(ゆかい)だねえ、さっぱりするねえ」と云っていた。

「済まないが税金がまたあがる。今日は少うし森から、たきぎを運んでくれ」オツベルは房(ふさ)のついた赤い帽子(ぼうし)をかぶり、両手をかくしにつっ込んで、次の日象にそう言った。

「ああ、ぼくたきぎを持って来よう。いい天気だねえ。ぼくはぜんたい森へ行くのは大すきなんだ」象はわらってこう言った。

 オツベルは少しぎょっとして、パイプを手からあぶなく落としそうにしたがもうあのときは、象がいかにも愉快なふうで、ゆっくりあるきだしたので、また安心してパイプをくわえ、小さな咳(せき)を一つして、百姓どもの仕事の方を見に行った。

 そのひるすぎの半日に、象は九百把たきぎを運び、眼を細くしてよろこんだ。

 晩方象は小屋に居て、八把の藁をたべながら、西の四日の月を見て

「ああ、せいせいした。サンタマリア」と斯(こ)うひとりごとしたそうだ。

 その次の日だ、

「済まないが、税金が五倍になった、今日は少うし鍛冶場(かじば)へ行って、炭火を吹(ふ)いてくれないか」

「ああ、吹いてやろう。本気でやったら、ぼく、もう、息で、石もなげとばせるよ」

 オツベルはまたどきっとしたが、気を落ち付けてわらっていた。

 象はのそのそ鍛冶場へ行って、べたんと肢を折って座(すわ)り、ふいごの代りに半日炭を吹いたのだ。

 その晩、象は象小屋で、七把(わ)の藁をたべながら、空の五日の月を見て

「ああ、つかれたな、うれしいな、サンタマリア」と斯う言った。

 どうだ、そうして次の日から、象は朝からかせぐのだ。藁も昨日はただ五把だ。よくまあ、五把の藁などで、あんな力がでるもんだ。

 じっさい象はけいざいだよ。それというのもオツベルが、頭がよくてえらいためだ。オツベルときたら大したもんさ。

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