超人間X号

42話 迷えるロケット

2,049字 約4分 2001年12月29日 公開

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 宇宙航空船は、いま、まるで迷ってしまったように、大空を矢のように走りつづけている。

 高度はすでに、二万メートルをこえた。このままでは、地球の引力圏(いんりょくけん)(だっ)して、月の世界へ飛んで行かないとも保証はできない。

 操縦装置は、いまや全然博士の手におえず、この航空船の行手を知っているものは、ただ超人間X号だけだった。

「だめだ。もうぼくにはどうすることもできない。諸君もいよいよかくごをきめてくれたまえ――」

 博士があきらめたように、目をとじた時である。操縦室の扉をひらいて、山形警部がとびこんで来た。

「先生、先生、たいへんです。たいへんなことが起りましたよ」

「これ以上、たいへんなことが起こるもんか」

 博士の答えはぶっきらぼうだったが、警部はつかつかと博士のそばに歩みよると、その耳に口をよせて、恐ろしいことばをささやいた。

「先生、X号がこの飛行機の中にしのびこんでいますよ」

「えッ、なんだって、それはほんとうかい。どうしてそんなことが分かった――」

 博士は警部の腕をとらえて、はげしくゆすぶった。

「いま、冷蔵室へ、私のからだを運びこんで出て来たとき、廊下の(はし)を曲った男があったんです。それがなんと――先生にそっくり、あのX号にちがいないんですよ」

「そしてその男はどこへ行った」

「気がつかないように、あとを追いかけましたが、どこにも見えません。X号の恐ろしさはよく私も知っていますから、一人であぶないことをするよりは、こう思って、先生に報告をしに帰って来たんです」

「そうか。よくやってくれた。それならばまだいくらか望みはあるぞ……」

 博士はしきりに考えこんでいたのだった。

「分かった。きっとそれにちがいない。X号は原子爆弾とウラニウムの原料を持って、この飛行機に乗りこんだんだ。それだから、原子爆弾を投下しても、あの程度の爆発しか起こらなかったんだ」

 博士はひざを(たた)いて叫んだ。

「でも、いつのまにそんな離れわざをやったんでしょう」

 戸山少年が、ふしぎそうにたずねた。

「あの放送をしてから、この航空船が飛びだすまでには、五六分の時間があったろう。そのあいだに、きっとX号はこの冒険をやってのけたのだよ」

「それではいったいどうすればよいのです」

「X号を倒して、機械の調子を直し、また地上へ帰りつくのだ。きっとどこかでX号が機械の調子を狂わせているのにちがいないのだから、X号を倒しさえすれば、またこの航空船は、思うとおりに動くようになるよ」

 だがそのX号を倒すには、いったいどうすればよいのだろう。あの電臓は火にも水にも電撃(でんげき)にも、どのような刺戟(しげき)にも、たえるはず――それを破壊するには、原子力によるほかはないと、博士もはっきりいっていたではないか。この中で原子爆弾が使えないのは、きまりきったことだ。とすれば、どうしてこの超人間に対抗するのか――

 博士はその時とつぜん口をひらいていいだした。

「その壁のボタンを一つ一つおして見てくれないか」

 左手の壁には、小さなスクリーンがあって、その下には五六十個のボタンがついていたのである。戸山少年がためしに、その一つ、17という番号のボタンをおしてみると、スクリーンの上には、設備のよく行きとどいた、手術室の光景がうつしだされた。

「先生、これはなんですか」

「テレビジョンだよ。この航空船の各部屋には、テレビジョンの送信装置がしかけてあって、どの部屋でいまどんなことが起こっているか、すぐこの操縦室に分かるようになっているんだ。それでX号の場所を探してごらん」

 少年たちは次から次へとボタンをおした。そして23というボタンをおしたときである。何か複雑な機械の前に坐りこんで、一生けんめいに、ダイアルを廻しているX号の姿が、スクリーンの上にありありとうつしだされたのであった。

「先生、先生、いましたよ。X号の姿がみえました。23という番号のついた部屋です」

 戸山少年は、必死になって叫んでいた。

「ああそうか。やっぱりあそこにおったのか――」

 博士はほっとため息をついた。

「いったいなんの部屋なんです」

「第二操縦室だよ。万一、この操縦室がだめになったとき、その部屋から操縦ができるように設計しておいたのだが、二カ所で思い思いに機械を動かしては、このロケットも、変になるのもあたりまえだよ」

「それはどうすればよいでしょう」

「ぼくはここで機械を守っているから、君たちは火焔放射器でX号を攻撃してくれたまえ」

「でもX号は、火焔放射器には抵抗できるのでしょう」

「いや、電臓は殺すことはできないが、皮膚にやけどをさせることはできるのだから、X号もある程度は、力を失うことになる。そのあいだに、向こうの操縦装置を破壊して、このロケットを、思うように動かし、負傷させたX号を、この航空船の中にはいっている小型ロケット機に乗せて発射し、それを原子ロケット砲で粉砕(ふんさい)するんだ」

 なるほど、それはじつにどうどうたる計画だった。だがX号ともあろうものが、おめおめとその計画にひっかかってくるであろうか。

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