雨夜の怪談

5話

391字 約1分 2019年11月15日 公開

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 明治廿三(にじゅうさん)年の二月、父と共に信州軽井沢に宿(やど)る。昨日から降積(ふりつ)む雪で外へは出られぬ。日の暮れる頃に猟夫(かりうど)が来て、鹿の肉を買つて()れと云ふ。退屈の折柄(おりから)、彼を炉辺(ろへん)に呼び入れて、種々(いろいろ)の話をする。

 木曾路の山へ分け入ると、折々に不思議を見る。猟夫仲間では(これ)えてものと云ふ。現に()の猟夫も七八年(ぜん)二三人の同業者と連れ立つて、木曾の山奥へ(りょう)に行つた。(かか)る深山へ登る時には、四五(にち)(ぶん)の米の他に(なべ)(かま)をも(たずさ)へて行くのが慣例(ならい)

 登山してから三日目の夕刻、一同は()ある大樹(たいじゅ)の下に(たむろ)して夕飯(ゆうめし)()く。で、もう()い頃と一人が釜の(ふた)を明けると、濛々(もうもう)と※と出た。あツと驚いて再び蓋をすると、其中(そのなか)物馴(ものな)れた一人が「えてものだ、鉄砲を撃て。」と云ふ。一同(すぐ)に鉄砲を()つて、何処(どこ)(あて)とも()しに二三(ぱつ)。それから(さら)に釜の蓋を明けると今度は何の不思議もない。

 えてものの正体は(なん)だか知らぬが、処々(おりおり)()ういふ悪戯(いたずら)をすると、猟夫の話。

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