化鳥

11話 第十一

1,381字 約3分 2003年5月29日 公開

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(とり)なの、母様(おつかさん))とさういつて其時(そのとき)(わたし)()いた。

(これ)にも母様(おつかさん)(すこ)口籠(くちごも)つておいでゝあつたが、

(とり)ぢやないよ、(はね)()へた(うつく)しい(ねえ)さんだよ)

()うしても(わか)らんかつた。うるさくいつたらしまひにやお(まへ)には(わか)らない、とさうおいひであつた、また推返(おしかへ)して()いたら、やつぱり、

(はね)()へたうつくしい(ねえ)さんだつてば)

それで仕方(しかた)がないからきくのはよして、()やうと(おも)つた、(その)うつくしい(はね)のはへたもの()たくなつて、何処(どこ)()ます/\ツて、せつツいても()らないと、さういつてばかりおいでゝあつたが、毎日(まいにち)/\あまりしつこかつたもんだから、とう/\余儀(よぎ)なさゝうなお顔色(かほつき)で、

鳥屋(とりや)(まへ)にでもいつて()()るが(いゝ)

そんならわけはない。

小屋(こや)()て二(ちやう)ばかり()くと(すぐ)(さか)があつて、(さか)下口(おりくち)一軒(いつけん)鳥屋(とりや)があるので、樹蔭(こかげ)(なん)にもない、お天気(てんき)のいゝ(とき)あかるい/\(ちひ)さな(みせ)で、町家(まちや)(のき)ならびにあつた。鸚鵡(あうむ)なんざ、くるツとした(つゆ)のたりさうな、(ちい)さな()で、あれで(ひとみ)(うご)きますね。毎日(まいにち)々々行()つちやあ()つて()たので、しまひにやあ見知顔(みしりがほ)(わたし)(かほ)()(うなづ)くやうでしたつけ、でもそれぢやあない。

(こま)はね、(たけ)(たか)い、(かご)(なか)(した)から(うへ)()んで、すがつて、ひよいと(さかさ)(はら)()せて熟柿(ぢくし)(おつ)こちるやうにぽたりとおりて()をつゝいて、(わたし)をばかまひつけない、ちつとも()()けてくれやうとはしないであつた、それでもない。(みんな)(ちが)つとる。(はね)()へたうつくしい(ねえ)さんは()ないのッて、一所(いつしよ)()つた(ひと)をつかまへちやあ、()いたけれど、(わら)ふものやら、(あざ)けるものやら、()かないふりをするものやら、つまらないとけなすものやら、馬鹿(ばか)だといふものやら、番小屋(ばんごや)媽々(かゝ)()此奴(こいつ)()うかして()らあ、といふものやら、(みんな)(けだもの)だ。

(はね)()へたうつくしい(ねえ)さんは()ないの)ツて()いた(とき)莞爾(につこり)(わら)つて両方(りやうはう)から左右(さいう)()でおうやうに(わたし)天窓(あたま)()でゝ()つた、それは一様(いちやう)緋羅紗(ひらしや)のづぼんを穿()いた二人(ふたり)騎兵(きへい)で――()いた(とき)――莞爾(につこり)(わら)つて、両方(りやうほう)から左右(さいう)()で、おうやうに(わたし)天窓(あたま)をなでゝ、そして()(ひき)あつて(だま)つて(さか)をのぼつて()つた、長靴(ながぐつ)(おと)がぼつくりして、(ぎん)(けん)(なが)いのがまつすぐに(ふた)ツならんで(かゞや)いて()えた。そればかりで、あとは(みな)馬鹿(ばか)にした。

五日(いつか)ばかり学校(がくかう)から(かへ)つちやあ其足(そのあし)鳥屋(とりや)(みせ)()つてじつと()つて(おく)(はう)(くら)(たな)(なか)で、コト/\と(おと)をさして()(その)(とり)まで見覚(みおぼ)えたけれど、(はね)()へた(ねえ)さんは()ないのでぼんやりして、ぼツとして、ほんとうに(すこ)馬鹿(ばか)になつたやうな()がしい/\、()()れると(かへ)(かへ)りした。で、とても鳥屋(とりや)には()ないものとあきらめたが、()うしても()たくツてならないので、また母様(おつかさん)にねだつて()いた。何処(どこ)()るの、(はね)()へたうつくしい(ひと)何処(どこ)()るのツて。(なん)とおいひでも肯分(きゝわ)けないものだから母様(おつかさん)が、

(それでは(はやし)へでも、(うら)田畝(たんぼ)へでも()つて()ておいで。何故(なぜ)ツて天上(てんじよう)(あそ)んで()るんだから(かご)(なか)()ないのかも()れないよ)

それから(わたし)、あの、梅林(ばいりん)のある(ところ)(まゐ)りました。

あの桜山(さくらやま)と、桃谷(もゝだに)と、菖蒲(あやめ)(いけ)とある(ところ)で。

しかし(それ)(たゞ)青葉(あをば)ばかりで菖蒲(あやめ)(みじか)いのがむらがつてゝ、(みづ)(いろ)(くろ)時分(じぶん)此処(こゝ)へも二日(ふつか)三日(みつか)(つゞ)けて()きましたつけ、小鳥(ことり)()つからなかつた。(からす)沢山(たんと)()た。あれが、かあ/\()いて(ひと)しきりして(しづ)まると其姿(そのすがた)()えなくなるのは、大方(おほかた)其翼(そのはね)で、()(ひかり)をかくしてしまふのでしやう、(おほ)きな(はね)だ、まことに(おほき)(つばさ)だ、けれどもそれではない。

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