2話 多神教(2)
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後見 何が、お霜婆さんの、ほれ、駄菓子屋の奥に、ちらちらする、白いものがあっけえ。町での御恩人ぞい。恥しい病さあって隠れてござるで、ほっても垣のぞきなどせまいぞ、と婆さんが言うだでな。
笛の男 癩ずらか。
太鼓の男 恥しい病ちゅうで。
おかめの面の男 ほんでも、孕んだ娘だべか。
禰宜 女子が正しい懐妊は恥ではないのじゃ。それでは、毎晩、真夜中に、あの馬も通らぬ一本橋を渡ったじゃなあ。
道化の面の男 女の一念だで一本橋を渡らいでかよ。ここら奥の谿河だけれど、ずっと川下で、東海道の大井川より大かいという、長柄川の鉄橋な、お前様。川むかいの駅へ行った県庁づとめの旦那どのが、終汽車に帰らぬわ。予てうわさの、宿場の娼婦と寝たんべい。唯おくものかと、その奥様ちゅうがや、梅雨ぶりの暗の夜中に、満水の泥浪を打つ橋げたさ、すれすれの鉄橋を伝ってよ、いや、四つ這いでよ。何が、いま産れるちゅう臨月腹で、なあ、流に浸りそうに捌き髪で這うて渡った。その大な腹ずらえ、――夜がえりのものが見た目では、大い鮟鱇ほどな燐火が、ふわりふわりと鉄橋の上を渡ったいうだね、胸の火が、はい、腹へ入って燃えたんべいな。
仕丁 お言の中でありますがな、橋が危くば、下の谿河は、巌を伝うて渡られますでな、お厩の馬はいつも流を越します。いや、先刻などは、落葉が重なり重なり、水一杯に渦巻いて、飛々の巌が隠れまして、何処を渡ろうかと見ますうちに、水も、もみじで、一面に真紅になりました。おっと……酔った目の所為ではござりませぬよ。
禰宜 棚村。(仕丁の名)御身は何の話をするや。
仕丁 はあ、いえ、孕婦が鉄橋を這越すから見ますれば、丑の刻参が谿河の一本橋は、気もなく渡ると申すことで。石段は目につきます。裏づたいの山道を森へ通ったに相違はござりますまい。
神職 棚村、御身まず、その婦の帯を棄てい。
禰宜 かような婦の、汚らわしい帯を、抱いているという事があるものか。
仕丁 私が、確と圧えておりますればこそで、うかつに棄てますと、このまま黒蛇に成って《のた》り廻りましょう。
禰宜 榛(神職名)様がおっしゃる。樹の枝へなりと掛けぬかい。
仕丁 樹に掛けましたら、なお、ずるずると大蛇に成って下ります。(一層胸に抱く。)
神職 棚村、見苦しい、森の中へ放し込め。
仕丁、その言の如くにす。――
お沢 あの……(ふるえながら差出す手を、払いのけて、仕丁。森に行く。帯を投げるとともに飛返る。)
神職 何とした。
仕丁 ずるずるずると巻きましたが、真黒な一幅になって、のろのろと森の奥へ入りました。……大方、釘を打込みます古杉の根へ、一念で、巻きついた事でござりましょう。
神職 いずれ、森の中において、忌わしく、汚らわしき事をいたしおるは必定じゃ。さて、婦。……今日は昼から籠ったか。真直に言え、御前じゃぞ。
お沢 はい、(間)はい、あの、一七日の満願まで……この願を掛けますものは、唯一目、……一度でも、人の目に掛りますと、もうそれぎりに、願が叶わぬと申します。昨夜までは、獣の影にも逢いません。もう一夜、今夜だけ、また不思議に満願の夜といいますと、人に見られると聞きました。見られたら、どうしましょう。口惜い……その人の、咽喉、胸へ喰いつきましても……
神職 これだ――したたかな婦めが。
お沢 ええ、あのそれが何になりましょう。昼から森にかくれました方が、何がどうでも、第一、人の目にかかりますまいと、ふと思いついたのです。木の葉を被り、草に突伏しても、すくまりましても、雉、山鳥より、心のひけめで、見つけられそうに思われて、気が気ではありません。かえって、ただの参詣人のようにしております方が、何の触りもありますまいと、存じたのでございます。
神職 秘しがくしに秘め置くべき、この呪詛の形代を(藁人形を示す)言わば軽々しう身につけおったは――別に、恐多い神木に打込んだのが、森の中にまだ他にもあるからじゃろ。
お沢 いいえ、いいえ……昨夜までは、打ったままで置きました。私がちょっとでも立離れます間に――今日はまたどうした事でございますか、胸騒ぎがしますまで。……
禰宜 いや、胸騒ぎが凄じい、男を呪詛うて、責殺そうとする奴が。
お沢 あの、人に見つかりますか、鳥獣にも攫われます。故障が出来そうでなりません。それで……身につけて出ましたのです。そして……そして……お神ぬし様、皆様、誰方様も――憎い口惜しい男の五体に、五寸釘を打ちますなどと、鬼でなし、蛇でなし、そんな可恐い事は、思って見もいたしません。可愛い、大事な、唯一人の男の児が煩っておりますものですから、その病を――疫病がみを――
「ええ。」「疫病神。」村人らまた退る。
神職 疫病神を――
お沢 はい、封じます、その願掛けなんでございますもの。
神職 町にも、村にも、この八里四方、目下疱瘡も、はしかもない、何の疾だ。
お沢 はい……
禰宜 何病じゃ。
お沢 はい、風邪を酷くこじらしました。
神職 (嘲笑う)はてな、風に釘を打てば何になる、はてな。
禰宜 はてな、はてな。
村人らも引入れられ、小首を傾くる状、しかつめらし。
仕丁 はあ、皆様、奴凧が引掛るでござりましょうで。
――揃って嘲り笑う。――
神職 出来た。――掛ると言えば、身たちも、事件に引掛りじゃ。人の一命にかかわる事、始末をせねば済まされない。……よくよく深く企んだと見えて――見い、その婦、胸も、膝も、ひらしゃらと……(お沢、いやが上にも身を細め、姿の乱れを引つくろい引つくろい、肩、袖、あわれに寂しく見ゆ)余りと言えば雪よりも白い胸、白い肌、白い膝と思うたれば、色もなるほど白々としたが、衣服の下に、一重か、小袖か、真白い衣を絡いいる。魔の女め、姿まで調えた。あれに(肱長く森を指す)形代を礫にして、釘を打った杉のあたりに、如何ような可汚しい可忌しい仕掛があろうも知れぬ。いや、御身たち、(村人と禰宜にいう)この婦を案内に引立てて、臨場裁断と申すのじゃ。怪しい品々かっぽじって来られい。証拠の上に、根から詮議をせねばならぬ。さ、婦、立てい。
禰宜 立とう。
神職 許す許さんはその上じゃ。身は――思う旨がある。一度社宅から出直す。棚村は、身ととも参れ。――村の人も婦を連れて、引立てて――
村人ら、かつためらい、かつ、そそり立ち、あるいは捜し、手近きを掻取って、鍬、鋤の類、熊手、古箒など思い思いに得ものを携う。
後見 先へ立て、先へ立とう。
禰宜 箒で、そのやきもちの頬を敲くぞ、立ちませい。
お沢 (急に立って、颯と森に行く。一同面を見合すとともに追って入る。神職と仕丁は反対に社宅―舞台上には見えず、あるいは遠く萱の屋根のみ―に入る。舞台空し。落葉もせず、常夜燈の光幽に、梟。二度ばかり鳴く。)
神職 (威儀いかめしく太刀を佩き、盛装して出づ。仕丁相従い床几を提げ出づ。神職。厳に床几に掛る。傍に仕丁踞居て、棹尖に剣の輝ける一流の旗を捧ぐ。――別に老いたる仕丁。一人。一連の御幣と、幣ゆいたる榊を捧げて従う。)
お沢 (悄然として伊達巻のまま袖を合せ、裾をずらし、打うなだれつつ、村人らに囲まれ出づ。引添える禰宜の手に、獣の毛皮にて、男枕の如くしたる包一つ、怪き紐にてかがりたるを不気味らしく提げ来り、神職の足近く、どさと差置く。)
神職 神のおおせじゃ、婦、下におれ。――誰ぞ御灯をかかげい――(村人一人、燈を開く。灯にすかして)それは何だ。穿出したものか、ちびりと濡れておる。や、(足を爪立つ)蛇が絡んだな。
禰宜 身どもなればこそ、近う寄っても見ましたれ。これは大木の杉の根に、草にかくしてござりましたが、おのずから樹の雫のしたたります茂ゆえ、びしゃびしゃと濡れております。村の衆は一目見ますと、声も立てずに遁ぎょうとしました。あの、円肌で、いびつづくった、尾も頭も短う太い、むくりむくり、ぶくぶくと横にのたくりまして、毒気は人を殺すと申す、可恐く、気味の悪い、野槌という蛇そのままの形に見えました。なれども、結んだのは生蛇ではござりませぬ。この悪念でも、さすがは婦で、包を結えましたは、継合わせた蛇の脱殻でござりますわ。
神職 野槌か、ああ、聞いても忌わしい。……人目に触れても近寄らせまい巧じゃろ、企んだな。解け、解け。
禰宜 (解きつつ)山犬か、野狐か、いや、この包みました皮は、狢らしうござります。
一同目を注ぐ。お沢はうなだれ伏す。
神職 鏡――うむ、鉄輪――うむ、蝋燭――化粧道具、紅、白粉。おお、お鉄漿、可厭なにおいじゃ。……別に鉄槌、うむ、赤錆、黒錆、青錆の釘、ぞろぞろと……青い蜘蛛、紅い守宮、黒蜥蜴の血を塗ったも知れぬ。うむ、(きらりと佩刀を抜きそばむると斉しく、藁人形をその獣の皮に投ぐ)やあ、もはや陳じまいな、婦。――で、で、で先ず、男は何ものだ。
お沢 (息の下にて言う)俳優です。
――「俳優、」「ほう俳優。」「俳優。」と口々に言い継ぐ。
神職 何じゃ、俳優?……――町へ参ってでもおるか。国のものか。
お沢 いいえ、大阪に――
禰宜 やけに大胆に吐すわい。
神職 おのれは、その俳優の妾か。
お沢 いいえ。
神職 聞けば、聞けば聞くほど、おのれは、ここだくの邪淫を侵す。言うまでもない、人の妾となって汚れた身を、鏝塗上塗に汚しおる。あまつさえ、身のほどを弁えずして、百四、五十里、二百里近く離れたままで人を咒詛う。
仕丁 その、その俳優は、今大阪で、名は何と言うかな。姉様。
神職 退れ、棚村。恁る場合に、身らが、その名を聞き知っても、禍は幾分か、その呪詛われた当人に及ぶと言う。聞くな。聞けば聞くほど、何が聞くほどの事もない。――淫奔、汚濁、しばらくの間も神の御前に汚らわしい。茨の鞭を、しゃつの白脂の臀に当てて石段から追落そう。――が呆れ果てて聞くぞ、婦。――その釘を刺した形代を、肌に当てて居睡った時の心持は、何とあった。
お沢 むずむず痒うございました。
禰宜 何じゃ藁人形をつけて……肌が痒い。つけつけと吐す事よ。これは気が変になったと見える。
お沢 いいえ、夢は地獄の針の山。――目の前に、茨に霜の降りましたような見上げる崖がありまして、上れ上れと恐しい二つの鬼に責められます。浅ましい、恥しい、裸身に、あの針のざらざら刺さるよりは、鉄棒で挫かれたいと、覚悟をしておりましたが、馬が、一頭、背後から、青い火を上げ、黒煙を立てて駈けて来て、背中へ打つかりそうになりましたので、思わず、崖へころがりますと、形代の釘でございましょう、針の山の土が、ずぶずぶと、この乳へ……脇の下へも刺りましたが、ええ、痛いのなら、うずくのなら、骨が裂けても堪えます。唯くわッと身うちがほてって、その痒いこと、むず痒さに、懐中へ手を入れて、うっかり払いましたのが、つい、こぼれて、ああ、皆さんのお目に留ったのでございます。
神職 はて、しぶとい。地獄の針の山を、痒がる土根性じゃ。茨の鞭では堪えまい。よい事を申したな、別に御罰の当てようがある。何よりも先ず、その、世に浅ましい、鬼畜のありさまを見しょう。見よう。――御身たちもよく覚えて、お社近い村里の、嫁、嬶々、娘の見せしめにもし、かつは郡へも町へも触れい。布気田。
禰宜 は。
神職 じたばたするなりゃ、手取り足取り……村の衆にも手伝わせて、その婦の上衣を引剥げ。髪を捌かせ、鉄輪を頭に、九つか、七つか、蝋燭を燃して、めらめらと、蛇の舌の如く頂かせろ。
仕丁 こりゃ可い、可い。最上等の御分別。
神職 退れ、棚村。さ、神の御心じゃ、猶予うなよ。
――渠ら、お沢を押取込めて、そのなせる事、神職の言の如し。両手を扼り、腰を押して、真正面に、看客にその姿を露呈す。――
お沢 ヒイ……(歯を切りて忍泣く。)
神職 いや、蒼ざめ果てた、がまだ人間の婦の面じゃ。あからさまに、邪慳、陰悪の相を顕わす、それ、その般若、鬼女の面を被せろ。おお、その通り。鏡も胸に、な、それそれ、藁人形、片手に鉄槌。――うむその通り。一度、二度、三度、ぐるぐると引廻したらば、可。――何と、丑の刻の咒詛の女魔は、一本歯の高下駄を穿くと言うに、些ともの足りぬ。床几に立たせろ、引上げい。
渠は床几を立つ。人々お沢を抱すくめて床几に載す。黒髪高く乱れつつ、一本の杉の梢に火を捌き、艶媚にして嫋娜なる一個の鬼女、すっくと立つ――
お沢 ええ! 口惜しい。(殆ど痙攣的に丁と鉄槌を上げて、面斜めに牙白く、思わず神職を凝視す。)
神職 (魔を切るが如く、太刀を振ひらめかしつつ後退る)したたかな邪気じゃ、古今の悪気じゃ、激い汚濁じゃ、禍じゃ。(忽ち心づきて太刀を納め、大なる幣を押取って、飛蒐る)御神、祓いたまえ、浄めさせたまえ。(黒髪のその呪詛の火を払い消さんとするや、かえって青き火、幣に移りて、めらめらと燃上り、心火と業火と、もの凄く立累る)やあ、消せ、消せ、悪火を消せ、悪火を消せ。ええ、埒あかぬ。床ぐるみに蹴落さぬかいやい。(狼狽て叫ぶ。人々床几とともに、お沢を押落し、取包んで蝋燭の火を一度に消す。)
お沢 (崩折れて、倒れ伏す。)
神職 (吻と息して)――千慮の一失。ああ、致しようを過った。かえって淫邪の鬼の形相を火で明かに映し出した。これでは御罰のしるしにも、いましめにもならぬ。陰惨忍刻の趣は、元来、この婦につきものの影であったを、身ほどのものが気付かなんだ。なあ、布気田。よしよし、いや、村の衆。今度は鬼女、般若の面のかわりに、そのおかめの面を被せい、丑の刻参の装束を剥ぎ、素裸にして、踊らせろ。陰を陽に翻すのじゃ。
仕丁 あの裸踊、有難い。よい慰み、よい慰み。よい慰み!
神職 退れ、棚村。慰みものではないぞ、神の御罰じゃ。
禰宜 踊りましょうかな。ひひひ。(ニヤリニヤリと笑う。)
神職 何さ、笛、太鼓で囃しながら、両手を引張り、ぐるぐる廻しに、七度まで引廻して突放せば、裸体の婦だ、仰向けに寝はせまい。目ともろともに、手も足も舞踊ろう。
「遣るべい、」「遣れ。」「悪魔退散の御祈祷。」村人は饒舌り立つ。太鼓は座につき、早や笛きこゆ。その二、三人はやにわにお沢の衣に手を掛く。――
お沢 ああ、まあ、まあ。
神職 構わず引剥げ。裸体のおかめだ。紅い二布……湯具は許せよ。
仕丁 腰巻、腰巻……(手伝いかかる。)
禰宜 おこしなどというのじゃ。……汚れておろうかの。
後見 この婦なら、きれいでがすべい。
お沢 (身悶えしながら)堪忍して下さいまし、堪忍して下さいまし、そればかりは、そればかりは。
神職 罷成らん! 当社の掟じゃ。が、さよういたした上は、追放して許して遣る。
お沢 どうぞ、このままお許し下さいまし、唯お目の前を離れましたら、里へも家へも帰らずに、あの谿河へ身を投げて、死でお詫をいたします。
神職 水は浅いわ。
お沢 いいえ、あの急な激しい流れ、巌に身体を砕いても。――ええ、情ない、口惜い。前刻から幾度か、舌を噛んで、舌を噛んで死のうと思っても、三日、五日、一目も寝ぬせいか、一枚も欠けない歯が皆弛んで、噛切るやくに立ちません。舌も縮んで唇を、唇を噛むばかり。(その唇より血を流す。)
神職 いよいよ悪鬼の形相じゃ。陽を以って陰を払う。笛、太鼓、さあ、囃せ。引立てろ。踊らせい。
とりどりに、笛、太鼓の庭につきたるが、揃って音を入る。
お沢 (村人らに虐げられつつ)堪忍ね、堪忍、堪忍して、よう。堪忍……あれえ。
からりと鳴って、響くと斉しく、金色の機の梭、一具宙を飛落つ。一同吃驚す。社殿の片扉、颯と開く。
巫女 (階を馳せ下る。髪は姥子に、鼠小紋の紋着、胸に手箱を掛けたり。馳せ出でつつ、その落ちたる梭を取って押戴き、社頭に恭礼し、けいひつを掛く)しい、……しい……しい。……
一同茫然とす。
御堂正面の扉、両方にさらさらと開く、赤く輝きたる光、燦然として漲る裡に、秘密の境は一面の雪景。この時ちらちらと降りかかり、冬牡丹、寒菊、白玉、乙女椿の咲満てる上に、白雪の橋、奥殿にかかりて玉虹の如きを、はらはらと渡り出づる、気高く、世にも美しき媛神の姿見ゆ。
媛神 (白がさねして、薄紅梅に銀のさや形の衣、白地金襴の帯。髻結いたる下髪の丈に余れるに、色紅にして、たとえば翡翠の羽にてはけるが如き一条の征矢を、さし込みにて前簪にかざしたるが、瓔珞を取って掛けし襷を、片はずしにはずしながら、衝と廻廊の縁に出づ。凛として)お前たち、何をする。
――(一同ものも言い得ず、ぬかずき伏す。少しおくれて、童男と童女と、ならびに、目一つの怪しきが、唐輪と切禿にて、前なるは錦の袋に鏡を捧げ、後なるは階を馳せ下り、巫女の手より梭を取り受け、やがて、欄干擬宝珠の左右に控う。媛神、立直りて)――お沢さん、お沢さん。