魔法人形

21話 ポケット小僧

1,282字 約3分 2018年6月15日 公開

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 ところが、ふしぎなことに、マユミさんが、自動車のトランクから出てしまっても、まだトランクの中で、なにか、もごもご動いているものがあります。

 マユミさんは、犬かネコでも、つれてきたのでしょうか?

 いや、動物ではありません。人間の子どもです。トランクの中から、すばやくとびだしてきたのは、七つか八つぐらいに見える、ちっちゃな男の子でした。

 顔はまっ黒によごれ、ぼろぼろの服をきています。チンピラ隊のひとりで、名まえはポケット小僧という少年です。

 ポケット小僧とは、へんな名ですが、ポケットにはいるほど、小さいといういみなのです。十二にもなっていて、七つか八つぐらいに見えるほど小さいので、そんなあだなでよばれるようになりました。

 しかし、からだは小さいけれども頭はいいし、ひどくすばしっこい少年で、これまでにも、いろいろ手がらをたてたことがあります。チンピラ隊だいいちの人気ものでした。

 ポケット小僧は、マユミさんを、たいへん尊敬していますので、マユミさんが自動車のトランクにかくれて、怪人のすみかへいくのを、だまって見ていられなかったのです。じぶんもいっしょについていって、マユミさんをまもりたいと思ったのです。

 マユミさんが、トランクの中へしのびこんだとき、すぐあとから、ポケット小僧が、もぐりこんできましたので、おろそうとしましたが、どうしてもおりません。すみっこのほうにくっついて、てこでも動かないのです。

 トランクの中であらそっていて、運転手に気づかれたらたいへんですから、マユミさんも、つい、そのままにしておいたのです。いま、あやしい西洋館の前で、トランクからポケット小僧があらわれたのは、そういうわけだったのです。

 ふたりは、ひじょうにすばやく、トランクからすべり出したので、運転手はすこしも気づかず、そのまま車を出発させ、むこうのほうへ、遠ざかっていきました。

 マユミさんとポケット小僧は、やぶれた門をはいって、西洋館の玄関のほうへいそぎました。ひごろ、音をたてないで走ることを練習しているので、ふたりとも、いくら走っても、すこしも足音がしないのです。

 怪人は、西洋館の入口のドアの前にたって、なにかコトコトやっていました。かぎでドアを開こうとしているのでしょう。

 あたりは、まっ暗です。西洋館の窓からは、すこしもあかりがさしていません。まるで空家のように、しずまりかえっているのです。

 怪人は、宝冠のはいった白いふろしきづつみを、石段の上において、しきりにドアを開こうとしています。かぎがよくあわないのか、ずいぶんてまどるようです。

 すると、そのとき、石段のへんのやみの中に、もうろうと、ネズミ色の影が近づいてきました。暗くてよくわかりませんが、どうやら人間のようです。

 その影は、石段に近よったかとおもうと、そのまま、また、スーッと遠ざかって、やみの中へとけこんでしまいました。

 怪人は、すこしも、それに気がつきません。やっとドアが開いたので、石段においてあったふろしきづつみを持って、ドアの中にはいり、中から、カチンとかぎをかけてしまいました。

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