電人M

7話 電人Mあらわる

2,613字 約5分 2018年2月17日 公開

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 すると、木の茂みから、ヌーッと立ちあがったやつがあります。

 治郎君はそれを見ると、ギョッとして、動けなくなってしまいました。

 そいつは、おとなの一倍半もある、まっくろな、でっかいやつでした。からだは、ロボットのように、鉄かなんかでできていて、顔はガラスのようにすきとおって、恐ろしく大きく、目のところに二つの赤い光が、チカッ、チカッと、かがやいています。鼻も口もなくて、まるいガラスのようなものの中に、小さい機械が、ウジャウジャかたまっているのです。

 人間でいえば、口のへんにあたる、こまかい機械が、ピアノのキーのように、カタカタと、動きました。

「エヘヘヘヘヘ……。」

 怪物が、みょうな声で笑ったのです。

 治郎君は、あまりの恐ろしさに、死にものぐるいで、かけだしました。そして、家の中にころがりこむと、

「おとうさん、たいへんです。庭に、恐ろしいやつがいる。」

と、さけびました。

「なんだ、なんだ。」

 おとうさんの遠藤博士が、そこへ、かけつけてきました。そして、庭にへんなやつがいると聞くと、すぐに、懐中電灯をもって、とびだしていきましたが、もうそのときには、どこを捜しても、怪物の姿は見つかりませんでした。

 遠藤博士も、二度もこんなことがあっては、もう、笑っているわけにはいきません。すぐに警察に電話をかけて、警官に調べてもらうように、たのみました。

 すると、まもなく、近くの警察署から三人の警官がやってきて、博士邸の内外を念入りに調べてくれましたが、なんの発見(はっけん)もなく終わりました。

 それがすんでから、博士の応接間に集まった三人の警官のひとりが、へんな顔をして、こんなことを、言いだしたではありませんか。

「先生、その怪物は電気ロボットに、似ていますねえ。」

「え、ロボットというと。」

「ほら、月世界旅行の見世物が、前宣伝に使ったやつですよ。タコのような火星人と、ものすごい電気ロボットが、方ぼうにあらわれて、世間をさわがせたことがあるでしょう。」

「ああ、そうだ。治郎の見た怪物は、新聞にスケッチの出ていた、あの電気ロボットとそっくりですね。だが、その電気ロボットが、どうして、わたしの家へやってくるのでしょう。」

 博士は不審らしく、まゆをしかめました。

「あの電気ロボットならば、中に人間がはいっている、つくりものです。怪物でもなんでもありません。広告のチンドン屋と同じようなものですからね。しかし、そいつが、どうして、おたくの庭まで、はいってきたか、また、塀のそとを、うろついていたか。どうもふしぎですね。」

 そこで、三人の警官は、

「もしまた、あいつがあらわれたら、すぐかけつけますから、電話をください。」

といいのこして、そのまま、ひきあげていきました。

 ところが、そのあくる日の夕方のことです。またしても、恐ろしいことが起こりました。

 その夕方、治郎君の妹のやすえちゃんと、おかあさんの美代子さんが、いっしょに、二階への階段の下の、うすぐらい、広い廊下を歩いていたときです。

 階段の上から、だれかが、おりてきました。

 いまごろ、だれが二階にいたのかしらと思って、ヒョイと見あげますと……、そこに、恐ろしい姿があったのです。

 やすえちゃんは、「キャーッ。」といって、廊下にうずくまってしまいました。おかあさんも、やすえちゃんをかばうように、その上に重なって、いまにも気が遠くなりそうでした。

 それはあの電気ロボットの怪物でした。いや、そればかりでなく、もっときみのわるいものが、ロボットの首にまきついていました。

 それは、あのタコのような火星人です。六本の長い足を、電気ロボットの首にまきつけ、でっかい、まるい頭を、ロボットのプラスチックの頭の上にのせて、大きな目で、うすきみわるく、こちらをにらんでいるのです。

 その、なんともいえない、へんてこな姿で、ロボットは、一段一段、階段をおりてきます。

 やすえちゃんと、おかあさんは、もとのところに、うずくまったままで、どうすることもできません。いまにも、ロボットが、近づいて、おそろしいめに、あわせるのではないでしょうか。

 そのとき、バタバタと人の走ってくる足音がしました。治郎君です。さっきのやすえちゃんのさけび声を聞いて、かけつけてきたのです。

 廊下のかどを曲がると、すぐに、怪物の姿が目にうつりました。

「おとうさん、たいへんです。はやく来てください。」

 治郎君がせいいっぱいの声で、さけびました。

 それを聞くと、怪物は、まだ三段ほど残っていた階段を、パッととびおりて、治郎君のいるのとは反対の方へ、逃げていきます。

 そこへ、治郎君のうしろから、おとうさんの博士がかけつけてきました。そして、ロボットがあらわれたと聞くと、すぐに、そこの部屋にとびこんで、警察へ電話をかけるのでした。

「おとうさん、あいつは研究室の方へ、逃げました。ですから、行きどまりです。研究室のほかには木村さんの部屋があるきりです。木村さんの部屋にも、窓に鉄格子がはめてあるから、外へ逃げることはできません。そこで見はっていれば、ふくろのネズミですよ。」

 博士が電話をかけて出てくるのを待って、治郎君が言いました。

「うん、そうだ。警官がくるまで、ふたりで、ここで見はっていよう。わしは、ピストルを持ってきたから、もし、もどってきたら、これで、おどかせばいい。」

 遠藤博士は、届けずみのピストルを持っていたのです。

 ふたりが、そこで見はっていますと、しばらくして、向こうから、こちらへやってくる足音がしました。

 さては怪物がもどってきたのかと、ピストルを持って、身がまえましたが、どうも怪物ではなさそうです。なんだかよわよわしい、たよりない足音です。

 あらわれたのは、助手の木村青年でした。ねぼけたような顔をして、目をこすっています。

「おお、木村君、あいつはどうした。あのロボットはどうした。」

「え、ロボットですって。」

「じゃあ、きみは、あいつに出あわなかったんだな。それじゃ、まだ研究室にいるかもしれない。行ってみよう。」

 博士はさきにたって、研究室に急ぎ、パッと、ドアを開きましたが、中はからっぽです。

「まさか、きみの部屋じゃあるまいな。」

 そういって、木村助手の部屋も調べましたが、そこも、からっぽでした。

 ああ、怪物は、またしても、どこにも逃げ道のない、行きどまりの廊下から、きえうせてしまったのです。

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