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寒い夜の自我像

中原 中也 全3話 537字 2021年10月22日

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1. 1

きらびやかでもないけれど、

この一本の手綱をはなさず

この陰暗の地域をすぎる!

その志明かなれば

冬の夜を、われは嘆かず、

人々の憔燥のみの悲しみや

憧れに引廻される女等の鼻唄を、

我が瑣細なる罰と感じ

そが、わが皮膚を刺すにまかす。

蹌踉めくままに静もりを保ち、

聊か儀文めいた心地をもつて

われはわが怠惰を諫める、

寒月の下をゆきながら、

陽気で坦々として、しかも己を売らないことをと、

わが魂の願ふことであつた!……

2. 2

恋人よ、その哀しげな歌をやめてよ、

おまへの魂がいらいらするので、

そんな歌をうたひだすのだ。

しかもおまへはわがままに

親しい人だと歌つてきかせる。

ああ、それは不可ないことだ!

降りくる悲しみを少しもうけとめないで、

安易で架空な有頂天を幸福と感じ做し

自分を売る店を探して走り廻るとは、

なんと悲しく悲しいことだ……

3. 3

神よ私をお憐み下さい!

 私は弱いので、

 悲しみに出遇ふごとに自分が支へきれずに、

 生活を言葉に換へてしまひます。

 そして堅くなりすぎるか

 自堕落になりすぎるかしなければ、

 自分を保つすべがないやうな破目になります。

神よ私をお憐れみ下さい!

この私の弱い骨を、暖いトレモロで満たして下さい。

ああ神よ、私が先づ、自分自身であれるやう

日光と仕事とをお与へ下さい!

(一九二九・一・二〇)

寒い夜の自我像 — 中原 中也 — https://noveliz.cc/n/h00fz04h3a

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