5話 八号の三
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八号の三は坑内の馬追い
酒精中毒らしい舌は何時でもまわらなかった
袢天も帽子もドロドロにし
馬と一緒に暗い坑内から出てくると
まわらぬ舌を無理にまわして
妻に胸のいらいらをぶちまけていた
酔がまわるに従って、だんだん声が高くなるのが常だった。
「いったい、てめいは、せがれが高等を卒業したらどうするつもりだ?」
「何を毎日酒ばかし食ってけつがって
子供の教育とはよく出来た
わしが男だったら、立派に教育さしてみせら」
「なななんだど 畜生
なまいきぬかすと承知しねいゾ
酒はもとより好きではのまぬ、あわのつらさでやけてのむ。わからんか 畜生、
えへ、金、金だよ、金さえありゃ中学でも大学でも、
一日一円や二円の出面取りが
どうして子供を大学へなんぞやられると思う?
わかったようなわからない生いきぬかすない」
壁一重の対話が夜中まで繰り返され
仲々寝つかれない晩があった。