炭坑長屋物語

5話 八号の三

375字 約1分 2016年4月17日 公開

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八号の三は坑内の馬追い

酒精(アルコール)中毒らしい舌は何時でもまわらなかった

袢天(はんてん)も帽子もドロドロにし

馬と一緒に暗い坑内から出てくると

まわらぬ舌を無理にまわして

妻に胸のいらいらをぶちまけていた

酔がまわるに従って、だんだん声が高くなるのが常だった。

「いったい、てめいは、せがれが高等を卒業したらどうするつもりだ?」

「何を毎日酒ばかし食ってけつがって

 子供の教育とはよく出来た

 わしが男だったら、立派に教育さしてみせら」

「なななんだど 畜生

 なまいきぬかすと承知しねいゾ

 酒はもとより好きではのまぬ、あわのつらさでやけてのむ。わからんか 畜生、

 えへ、金、金だよ、金さえありゃ中学でも大学でも、

 一日一円や二円の出面取りが

 どうして子供を大学へなんぞやられると思う?

 わかったようなわからない生いきぬかすない」

壁一重の対話が夜中まで繰り返され

仲々寝つかれない晩があった。

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