三太郎の日記 第三

53話 九 藝術のための藝術と人生のための藝術 2

560字 約1分 2012年3月20日 公開

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 藝術の製作並びに鑑賞は云ふまでもなく人間の一つの活動である。故にそれは一個人の内部生活に於いて、又個人の集團なる社會に於いて、他の諸の活動や目的や理想と交渉するところなきを得ない。此等諸の活動や理想の中に在つて、藝術の製作並びに鑑賞は如何なる位置を占め、如何なる價値を有し、如何なる使命を持つか――藝術は此の如き著眼點から評價されることを拒むことが出來ない。さうして他の凡ての活動と等しく、藝術も亦人生全體の意義と理想とに參加し、窮極理想の實現に貢獻する程度に從つてその價値を獲得する。この意味に於いて凡ての藝術が人生のための藝術でなければならないことは、繰返して云ふまでもないことである。若し藝術のための藝術と云ふ主張が、此の如き著眼點から藝術を評價する權利を拒むことを意味するならば、それは主張ではなくて片意地と我儘とである。思想ではなくて思想の放棄である。藝術の意義に對する解釋ではなくて、單にがむしやらなる獨斷である。故にこの意味に於ける藝術のための藝術と人生のための藝術との對立は、最初から考察に價しない。それが苟も一つの主張として意義あるものであるためには、藝術のための藝術とは他との比較を拒む獨斷ではなくて、他の諸の價値と比較せる後にも猶藝術の價値の優越又は至上なることを主張するものでなければならない。

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