9話 三 去年の日記から 3
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何のために書を讀むか。
知らないのが口惜しいから讀む。
商賣だから讀む。
現在の樂しみを求めるために讀む。
自分の生活の基礎を拵へるつもりで讀む。
讀んで行きながら、書中の問題又は書中の世界に同化するは何の用ぞと思ふ。或部分は自分自身の問題に心奪はれながら上の空で讀む。或部分は書中の問題に同化せむと努力するために自分の問題を殺してゐることを意識しながら苦しみ讀む。自分の問題と書中の問題とピタリと呼吸が逢ふことを感じながら、先を樂しんで讀むことは頗る稀である。況して全篇を通じて呼吸の一致を感じ通すことなどは殆んどない。
かくて自分は中々本が讀めないのである。