春

田山 花袋 完結 全1話 619字 約1分 2020年5月31日 更新

春といふと、曾て紀州にあそんだ時のことが思ひ出されて来た。あそこは潮流の関係で、春の来ることが早く、伊勢あたりはまだやつと梅の花が散つた頃なのに、そこでは山桜が咲きみだれ、夏蜜柑が黄熟し、菜の花が黄く、蛙の声が到るところに湧くやうきこえた。 それに、そこは水蒸気が多く、樹々の緑の…
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初出 — 「婦人之友 第十七巻第四号」1923(大正12)年4月1日

底本: 定本 花袋全集 第二十七巻(臨川書店) ※青空文庫の公有作品です。入力・校正は青空文庫の方々によるものです。

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