26話 Z光線と海底超人
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長良川博士の無電は、またつづいた。
「すこしむずかしくなったようですが、面白い話ですから、もっと聞いてください」
と博士はいってから、
「そのコペルニクス山の崩壊度を、わたしのヨットで地球を一まわりしながら観測してまわってみました。ところがね、その結果として、大西洋から月へむかって電波のはやさでもって不可解な放射線が発射されているため、それでその崩壊がおこなわれていることがしょうめいできたのです。わかりますかね」
「いや、なんといってよいか、実におどろくべきことですね。それからどうしました」
「それからわたしは、注意をもっぱら大西洋にむけて、パリ大学から発射する電波の力をかり、研究をつづけてみましたところ、いま申した不可解な放射線――これをかりにZ線とよんでおきましょう。――その線を出す場所を十五カ所も海図の上で発見したのです。ところが、その十五カ所の線放射地点というのが、じつに恐ろしい事実を暗示しているのです」
「恐ろしい事実? それはなんです。まったく恐ろしいことです」
「戦慄すべき大暗示です。いいですか。その十五カ所の放射地点をたどって、これらを線でむすびあわせていきますと、大西洋のまんなかに一つみょうな形が出来あがりますが、その形がたいへんなのです」
「ああ、博士。あなたはもしや昔物語に伝えられるあの恐ろしい伝説を、わたしたちに信じさせようとなさるのではありますまいな」
「エバン船長。わたしはほんとうのことをお知らせするために、あなたをおどろかすのもまたやむをえないことだと思っていますよ。きっと今、あなたはいまから九千年前、大地震のために大西洋の波の下に陥没し去ったアトランティス大陸のことを思い出されたのでしょう。あのアトランティス大陸! 九千年前の大文明! 古い文化をほこるエジプトもギリシャも中国も、アトランティス大陸に花と咲き出でた大文化には、足もとへもよれなかったという、そのアトランティス!」
と、博士の声はふるえをおびて、
「今から一時間ほど前、わたしはこのパリ大学の研究室で、わたしの発見した十五カ所のZ線放射所を海図の上につらねてみましたところ、なんとおどろくではありませんか、それは、かの伝説にのこるとおりのアトランティス大陸の形になったのです。ああわたしたち学者は、つねに冷静でなければなりません。しかし、恐るべき暗号について、どうして戦慄しないでいられましょう!」
「……」
エバン船長の顔はあお白くなった。海底に沈んだアトランティス大陸の亡霊が、いまルゾン号の下にうごめいているらしいのだ。
「きっときっと、それは信じていいと思います。エバン船長よ。アトランティス大陸の沈んだあたりの海底に、われわれ世界人類の知らなかった、ある生物がすんでいるのです。これはどんな生物だかわたしはまだ知らない。しかし、月のコペルニクス山を崩壊させるその手ぎわからいっても、これはたしかにわれわれ人類より高等な生物だと断言していいでしょう。あの不可解なクイーン・メリー号の失踪こそ、それはZ線を放射する生物――これを海底超人族とよびましょう――その海底超人族のなせるわざだと思えば、ともかくも話がわかるではありませんか。貴船は大いに警戒して下さい。一刻も早く現場を去って帰港されるのが安全ですぞ」
博士は親切な言葉をもって、無線電話からの送話をむすんだ。