28話 洋上の暗雲
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北西の空から、海を圧するようなはげしい爆音が聞こえてきた。
「あっ、来た、きた」
いちはやくそれを聞きつけて甲板におどりあがったのは、スミス警部だった。
爆音は刻一刻、その大きさをまして、やがて霧のような雲の間から飛行機が現われた。
一機、二機、三機……。
かぞえてみると皆で十二機からなる偵察および爆撃の飛行隊であった。ルゾン号の近くにくるにしたがって、翼にそめだされた蛇の目のマークがはっきり見えてきた。
英国海軍に属する空軍の出動だ。
無線がはいってきた。
司令ラスキン大尉のひきいる英国の精鋭機だ。
一機が編隊列をはなれて、低空飛行にうつった。そしてルゾン号のそばに近づいてくるのであった。
スミス警部は身じたくをととのえて、エバン船長のところへあいさつにいった。
「ラスキン司令の好意で、わたしはこれからわが飛行機にのりこむことにします。どうもながながおせわになってありがとうございました」
「やあ、それは――」
と、船長も警部のすばやい身のひき方に感心し、かつ、あきれているようすだ。
「やあ坊や。きみも来るつもりなら、飛行機にのせてもらってやろう」
警部は三千夫をなでていった。
三千夫の心はうごいた。ルゾン号にいるより、空高く飛ぶ飛行機にのっている方がどんなにおもしろいかしれないからだ。
しかし、ざんねんなことは、スミス警部が長良川博士を気が変だと思っていることだ。これは少年にとってあまりいい感じがしなかった。
「さあ坊や。乗るか、乗らないか」
警部は三千夫には親切だった。
そのときだった。
「ああ、また『鉄の水母』が現われた」
という船員のおどろきの声がしたかと思うと、ビューンとうなりを生じてルゾン号のほばしらめがけてとびきたった通信なわ!
いそいで水夫がひろって船長に手わたしたものは、「黄色の眼」からの第二回警告文だった。その文面は走り書きで、次ぎのように書いてあった。
「フタタビ警告スル。無謀ナルコトヲヤメヨ。タッテヤルトイウナラ、余ハ世界人類ノ不幸ヲ救ウタメ、カワッテソノ暴挙ヲ思イトドマラスデアロウ。――黄色ノ眼ヨリ」
スミス警部は眼をいからせて叫んだ。
「なにを海賊船めが、なまいきな――」
ああ、たいへん。鉄の水母とスミス警部とのにらみ合いだ。
大西洋上の波はいよいよ高い。