64話 鉄水母待て
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怪潜水艇鉄水母が、ジム水兵をのせたまま、ずんずん海中にしずみかかったのだ。あわてたのはザベリン中尉だった。
鉄水母の撃沈命令がおりているのに、このまま鉄水母が沈んでしまっては、ザベリン中尉の職責がはたせない。
「おい、ジム。鉄水母を沈ませちゃならんぞ。なぜ艇内へはいってしらべないのか」
腰から下を水づかりのジム水兵は、あきれ顔をあげた。
「鉄水母をしずませるなとおっしゃっても、わしになにができますものか。第一、鉄水母の内部へはいれと命令されても、どういうものか、内部がみえているくせに、体が入口につかえてはいれないんですぜ」
「ばかをいうな。入口から内部がみえていて、それではいれないとは、どういうわけだ。さっぱりわけがわからないが」
「さようです。まったくわけがわからないので――」
と、いっているうちにも、鉄水母はずんずん沈んだ。海水は、ジムのへそをぬらして、胸にせまっている。かれは一生けんめい、艦橋のほばしらにつかまっている。
「おーい、鉄水母が沈んでしまうぞォ」
ジムは悲鳴をあげた。
ザベリン中尉は、ジム水兵よりも、もっともっとあわてた。
彼はとつぜん主砲を鉄水母の方にむけさせた。
これを見て、腰をぬかすほどおどろいたのはジム水兵だ。
「あっ、うつんですか。こっちをうっちゃいやですよ。重任をおびて、ここにきているジム水兵がいるんですからね。見落としちゃいけませんよ」
砲手の方も、ジム水兵のことには気がついていた。
「ザベリン中尉。鉄水母の上にはジム水兵がのっています。このまま砲撃すれば、ジムの体は、こっぱみじんになってしまいます」
そういって、中尉に警告をした。
すると中尉は、
「ジムの危険よりも、本官にあたえられた任務のほうが重大だ。いまここで鉄水母を撃沈しとかなきゃ、おれは艦隊司令官へ報告ができない。かまわないから、ねらいをつけて、どーんと一発ぶっぱなせ。ジムには、はやく海中へとびこんで鉄水母からはなれろと信号しろ」