モノグラム

1話 モノグラム(1)

361字 約1分 2017年10月28日 公開

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 私が、私の勤めていたある工場の老守衛(といっても、まだ五十歳には()のある男なのですが、何となく老人みたいな感じがするのです)栗原(くりはら)さんと心安くなって間もなく、恐らくこれは栗原さんの取って置きの話の(たね)で、彼は誰にでも、そうした打開(うちあ)け話をしても差支(さしつかえ)のない間柄(あいだがら)になると、待兼(まちか)ねた様に、それを持出すのでありましょうが、私もある晩のこと、守衛室のストーブを囲んで、その栗原さんの妙な経験談を聞かされたのです。

 栗原さんは話上手な上に、なかなか小説家でもあるらしく、この小噺(こばなし)めいた経験談にも、どうやら作為の跡が見えぬではありませんが、それならそれとして、やっぱり捨て難い味があり、そうした種類の打開け話としては、私は(いま)だに忘れることの出来ないものの一つなのです。栗原さんの話しっぷりを真似(まね)て、次にそれを書いて見ることに致しましょうか。

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