阿難と呪術師の娘

11話 第九場 その二

432字 約1分 2021年3月1日 公開

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(声の終らぬうちに大地より紅き焔が燃え上り、焔に包まれて一つの形影がせり上って来る。それは呪術師の老女である。)

老女 ――苦なる哉。僧を呪いし罪によって地獄の責苦を受くる事よ。あな悦ばしや地獄の責苦によりて、現世の罪を償う事よ。わたしの堕ちた地獄は等活地獄。毒の爪を磨いて互の身に立て肉を掻きさばく。(ようや)く死して苦を免れたりと思う間もなく、冷風一度到ればまたもとの体に蘇り、毒の爪を受く。かくすること幾百億度。――わたしの血は枯れ、また涙も流し尽した。

 さり乍らまたこの苦のうちにも仏光の導きあり。わたしの呪いももとはといえば、娘の望みを遂げさせ度さの親心と、仏はみそなわされた。み仏のさずけ給える一筋の蓮華の糸が、今わたしの手に在る。

 娘よ。この糸の一端は、今のそなたの浄き手の指に在る筈。そなたの導力が手繰(たぐ)るまにまに、やがてわたしも、そなたと一つ世界に運び上げられよう。あな讃むべき因果の(さば)き。あな有難や法の掟……。

(一抹の火焔と共に老女の姿は地下にせり下る。)

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