「ああしんど」

1話 「ああしんど」

660字 約1分 2008年10月27日 公開

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 よっぽど古いお話なんで御座(ござ)いますよ。私の祖父(じじい)の子供の時分に居りました、「(さん)」という猫なんで御座(ござ)います。三毛(みけ)だったんで御座(ござ)いますって。

 何でも、あの、その祖父(じじい)の話に、おばあさんがお嫁に来る時に――祖父(じじい)のお母さんなんで御座(ござ)いましょうねえ――泉州堺(せんしゅうさかい)から連れて来た猫なんで御座いますって。

 随分(ずいぶん)永く――家に十八年も居たんで御座(ござ)いますよ。大きくなっておりましたそうです。もう、耳なんか、厚ぼったく、五()ぐらいになっていたそうで御座(ござ)いますよ。もう年を()ってしまっておりましたから、まるで御隠居様のようになっていたんで御座(ござ)いましょうね。

 冬、炬燵(こたつ)の上にまあるくなって、()ていたんで御座(ござ)いますって。

 そして、(のび)をしまして、にゅっと高くなって、

「ああしんど」と言ったんだそうで御座(ござ)いますよ。

 屹度(きっと)曾祖母(おおばあ)さんは、炬燵(こたつ)(あた)って、眼鏡を懸けて、本でも見ていたんで御座(ござ)いましょうね。

 で、吃驚(びつくり)致しまして、この猫は屹度(きっと)化けると思ったんです。それから、捨てようと思いましたけれども、幾ら捨てても帰って来るんで御座(ごぎ)いますって。でも大人(おとな)しくて、(なん)にも悪い事はあるんじゃありませんけれども、私の祖父(じじい)は、「口を利くから、怖くって怖くって、仕方がなかった。」って言っておりましたよ。

 祖父(じじい)は私共の知っておりました時分でも、猫は大嫌いなんで御座(ござ)います。私共が所好(すき)で飼っておりましても、

「猫は化けるからな」と言ってるんで御座(ござ)います。

 で、祖父(じじい)は、猫をあんまり可愛(かあい)がっちゃ、()けない()けないって言っておりましたけれど、その()の猫は化けるまで居た事は御座(ござ)いません。

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