かの女の朝

1話 かの女の朝(1)

512字 約1分 2004年2月24日 公開

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 K雑誌先月号に載ったあなたの小説を見ました。ママの処女作というのですね、これが。ママの意図(いと)としては、フランス人の性情(せいじょう)が、利に鋭いと同時に洗練された情感と怜悧(れいり)さで、敵国の女探偵を可愛(かわ)ゆく優美に待遇する微妙な境地を表現したつもりでしょう。フランス(およ)びフランス人をよく知る(ぼく)には――もちろんフランス人にも日本人として僕が同感し()ねる性情も多分(たぶん)にありますが――それが実に明白に理解されます。そして()の作はその意味として()なり成功したものでしょう。だが、これは僕自身としてのママへの希望ですが、ママは何故(なぜ)ひとのことなんか書いて()るのですか。ママにはもっと書くべき世界がある。ママの抒情(じょじょう)的世界、何故其処(そこ)の女主人公にママはなり切らないのですか。ひとのこと(どころ)ではないでしょう。ママがママの手を動かして自分の筆を運ぶ以上、もっと、ママに急迫(きゅうはく)する世界を書かずには居られないはずです。それを他国の国情など書いて居るのは、やっぱりママの小児性(しょうにせい)が、いくらか見せかけの気持ちに使われて居るからですよ。ママ! ママは自分の抒情的世界の女主人に、いつもいつもなって居なさい。幼稚(ようち)なアンビシューに支配されないで。でなければ、小説なんか書きなさいますなよ。

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