6話 死ぬ つもりで!
読み方を変える
なかでも いちばん へんだなア、と おもったのが、いちばん りこうな 一休さんでした。
つぎの日 おしょうさまは、どこかの ほうじに でていって、るすでした。
「よし、この あいだに あの かめの なかの ものが みずあめか どくか、ためしてみよう。」
いたずらものの 一休さんは したなめずりを して おしょうさまの へやに しのびこんで いきました。
さっそく たなの まえに たちましたが、あいにく たなが たかくて、子どもの 一休さんには てが とどきません。一休さんは そばに あった ちゃだんすを ひきずってきて、どっこいしょ、と そのうえに のると、かめに りょうてを かけ、そろそろと ひきおろそうと しました。
が、かめが おもいものですから つるりと てが すべって、あッ と おもう まも あらばこそ、かめは どしーんと、一休さんの ぼうずあたまの うえに おちました。
「しまったッ!」
そう さけんだ 一休さんは、かめと いっしょに すってんころりと ちゃだんすの うえから ころげおちました。
その ひょうしに、一休さんは あたまから、どろどろと みずあめを かぶって しまいました。が、一休さんは みずあめの なかに つかりながら、ぺろぺろと みずあめを なめています。
「あまい あまい。」
やっぱり ちゅうふうの くすりだなんて うそだ。くすりなら にがい はずだ! 一休さんは むちゅうです。
が、はらいっぱい みずあめを なめてから、一休さんは、「これは しまった ことをした。」と、あおく なりました。
一休さんは そっと なめて、しらないふりを しているつもりだったのに、こんなに ありたけ こぼして しまっては、おしょうさんに わかって 大めだまを くうに きまっている! 一休さんは 大あわてに あわてて こぼれた みずあめを ふきとりましたが、とても 子どもの ちからでは ふききれません。
そればかりではなく、ふと みると、そばには おしょうさまの たいせつに している おちゃのみぢゃわんが こなごなに こわれて いるのでした。
すると うんの わるいときには しかたの ないもので、そこに ガラリと へやの しょうじが あいて、おしょうさまが かえってきました。
「わっ!」
一休さんが あめだらけの あたまを かかえると、これを みた おしょうさまは、
「しゅうけん、なに しとるのじゃ。」と、大ごえで しかりました。
「は、はい、はい。」
一休さんは 目を しろくろ させています。
「なにを しとると いうのじゃ。」
一休さんは わーんと なきだして しまいました。なきながら 一休さんの あたまには、一つの とんちが おもい うかびました。
「おしょうさま、おしょうさま。わたしは おしょうさまのだいじな だいじな おちゃわんを こわして しまいました。それが かなしくて わたしは 死んで おわびしようと おもって、こんなに たくさん おしょうさまの くすりを いただきましたが、ちっとも しねません。」
そう いうと、一休さんは りょうてで かおを おおって、まえよりも はげしく わんわん なきだしました。
「なに、ちゃわんを わったと……。」
「そうです。おしょうさまの おるすの あいだに おへやを そうじして おこうと おもって、おちゃわんを わりました。おしょうさま、ああ、わたしは しにたい、しにたい。」
一休さんは そう いいながら、また こぼれた みずあめを ぺろぺろと なめました。
おしょうさまは あきれかえって、一休さんを みつめていました。そんなことは うそに きまっています。
「うそじゃ。」
と、おしょうさまは しかりました。
「ちがいます。うそでは ありません。」
「そうか。」
じっと かんがえこんだ おしょうさまは、とつぜん あっはっはっは……と、わらいだして しまいました。そして、いいました。
「しゅうけん、わしが わるかった。これは わしが おまえたちを だました、ほとけの ばちと いう ものじゃ。」
それを きくと、こんどは 一休さんが おしょうさまの まえに りょうてを ついて、
「おしょうさま、わたしが わるうございました。わたしは うそを つきました。」
と、あやまりました。
「いいや、しゅうけん。はじめに うそを ついたのは わしじゃ。わるいのは この わしじゃ。」
「いいえ、わたしが わるうございました。」
「いや、わるいのは わしじゃ。」
一休さんと おしょうさまは こんどは おたがいに じぶんが わるい、と いいっこです。
「わかった、わかった。」
おしょうさまが、とうとう まけて しまいました。そして、一休さんに、
「しゅうけん、おまえの とんちには おどろいた。これからは わるいことを するなよ。わるいと きづいて さっそく あやまったのは、いい こころがけだ。」と、やさしく いいきかせました。