一休さん

6話 死ぬ つもりで!

2,049字 約4分 2021年6月25日 公開

読み方を変える
字の大きさ
行の間隔
1行の長さ
書体
配色
組み方

 なかでも いちばん へんだなア、と おもったのが、いちばん りこうな 一休(いっきゅう)さんでした。

 つぎの() おしょうさまは、どこかの ほうじに でていって、るすでした。

「よし、この あいだに あの かめの なかの ものが みずあめか どくか、ためしてみよう。」

 いたずらものの 一休(いっきゅう)さんは したなめずりを して おしょうさまの へやに しのびこんで いきました。

 さっそく たなの まえに たちましたが、あいにく たなが たかくて、()どもの 一休(いっきゅう)さんには てが とどきません。一休(いっきゅう)さんは そばに あった ちゃだんすを ひきずってきて、どっこいしょ、と そのうえに のると、かめに りょうてを かけ、そろそろと ひきおろそうと しました。

 が、かめが おもいものですから つるりと てが すべって、あッ と おもう まも あらばこそ、かめは どしーんと、一休(いっきゅう)さんの ぼうずあたまの うえに おちました。

「しまったッ!」

 そう さけんだ 一休(いっきゅう)さんは、かめと いっしょに すってんころりと ちゃだんすの うえから ころげおちました。

 その ひょうしに、一休(いっきゅう)さんは あたまから、どろどろと みずあめを かぶって しまいました。が、一休(いっきゅう)さんは みずあめの なかに つかりながら、ぺろぺろと みずあめを なめています。

「あまい あまい。」

 やっぱり ちゅうふうの くすりだなんて うそだ。くすりなら にがい はずだ! 一休(いっきゅう)さんは むちゅうです。

 が、はらいっぱい みずあめを なめてから、一休(いっきゅう)さんは、「これは しまった ことをした。」と、あおく なりました。

 一休(いっきゅう)さんは そっと なめて、しらないふりを しているつもりだったのに、こんなに ありたけ こぼして しまっては、おしょうさんに わかって (おお)めだまを くうに きまっている! 一休(いっきゅう)さんは (おお)あわてに あわてて こぼれた みずあめを ふきとりましたが、とても ()どもの ちからでは ふききれません。

 そればかりではなく、ふと みると、そばには おしょうさまの たいせつに している おちゃのみぢゃわんが こなごなに こわれて いるのでした。

 すると うんの わるいときには しかたの ないもので、そこに ガラリと へやの しょうじが あいて、おしょうさまが かえってきました。

「わっ!」

 一休(いっきゅう)さんが あめだらけの あたまを かかえると、これを みた おしょうさまは、

「しゅうけん、なに しとるのじゃ。」と、(おお)ごえで しかりました。

「は、はい、はい。」

 一休(いっきゅう)さんは ()を しろくろ させています。

「なにを しとると いうのじゃ。」

 一休(いっきゅう)さんは わーんと なきだして しまいました。なきながら 一休(いっきゅう)さんの あたまには、一つの とんちが おもい うかびました。

「おしょうさま、おしょうさま。わたしは おしょうさまのだいじな だいじな おちゃわんを こわして しまいました。それが かなしくて わたしは ()んで おわびしようと おもって、こんなに たくさん おしょうさまの くすりを いただきましたが、ちっとも しねません。」

 そう いうと、一休(いっきゅう)さんは りょうてで かおを おおって、まえよりも はげしく わんわん なきだしました。

「なに、ちゃわんを わったと……。」

「そうです。おしょうさまの おるすの あいだに おへやを そうじして おこうと おもって、おちゃわんを わりました。おしょうさま、ああ、わたしは しにたい、しにたい。」

 一休(いっきゅう)さんは そう いいながら、また こぼれた みずあめを ぺろぺろと なめました。

 おしょうさまは あきれかえって、一休(いっきゅう)さんを みつめていました。そんなことは うそに きまっています。

「うそじゃ。」

 と、おしょうさまは しかりました。

「ちがいます。うそでは ありません。」

「そうか。」

 じっと かんがえこんだ おしょうさまは、とつぜん あっはっはっは……と、わらいだして しまいました。そして、いいました。

「しゅうけん、わしが わるかった。これは わしが おまえたちを だました、ほとけの ばちと いう ものじゃ。」

 それを きくと、こんどは 一休(いっきゅう)さんが おしょうさまの まえに りょうてを ついて、

「おしょうさま、わたしが わるうございました。わたしは うそを つきました。」

 と、あやまりました。

「いいや、しゅうけん。はじめに うそを ついたのは わしじゃ。わるいのは この わしじゃ。」

「いいえ、わたしが わるうございました。」

「いや、わるいのは わしじゃ。」

 一休(いっきゅう)さんと おしょうさまは こんどは おたがいに じぶんが わるい、と いいっこです。

「わかった、わかった。」

 おしょうさまが、とうとう まけて しまいました。そして、一休(いっきゅう)さんに、

「しゅうけん、おまえの とんちには おどろいた。これからは わるいことを するなよ。わるいと きづいて さっそく あやまったのは、いい こころがけだ。」と、やさしく いいきかせました。

目次に戻る

目次