雨の玉川心中 02 遺書
1. 鶴巻夫妻宛太宰と富栄連名の遺書
永いあいだ、いろいろと身近く親切にして下さいました。忘れません。おやじにも世話になった。おまえたち夫婦は、商売をはなれて僕たちにつくして下さった。お金のことは石井に太宰 治
泣いたり笑ったり、みんな御存知のこと、末までおふたりとも御身大切に、あとのこと御ねがいいたします。誰もおねがい申し上げるかたがございません。あちらこちらから、いろいろなおひとが、みえると思いますが、いつものように、おとりなし下さいまし。
このあいだ、拝借しました着物、まだ水洗いもしてございませんの。おゆるし下さいまし、着物と共にありますお薬は、胸の病いによいもので、石井さんから太宰さんがお求めになりましたもの、御使用下さいませ。田舎から父母が上京いたしましたら、どうぞ、よろしくおはなし下さいませ。勝手な願いごと、おゆるし下さいませ。
昭和二十三年六月十三日富栄
追伸
お部屋に重要なもの、置いてございます。おじさま、奥様、お開けになって、野川さんと御相談下さいまして、暫くのあいだおあずかり下さいまし。それから、父と、姉に、それから、お友達に(ウナ電)お知らせ下さいまし。
父 滋賀県神崎郡八日市町二四四山崎晴弘
姉 神奈川県鎌倉市長谷通り二五六
マ・ソアール美容院山崎つた
友達
本郷区森川町九〇加藤郁子
淀橋区戸塚町一ノ四〇四宮崎晴子