ノベリズ
綺堂むかし語り
180字 約1分 2001年10月15日 公開
船は門司(もじ)に泊(かか)る。小春の海は浪おどろかず、風も寒くない。
酒を売る船、菓子を売る船、うろうろと漕ぎまわる。石炭をつむ女の手拭が白い。
対岸の下関(しものせき)はもう暮れた。寿永(じゅえい)のみささぎはどの辺であろう。
なにを呼ぶか、人の声が水に響いて遠近(おちこち)にきこえる。四面のかかり船は追いおいに灯を掲げた。すべて源氏の船ではあるまいか。わたしは敵に囲まれたように感じた。(明治39・11)
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