66話 (十)山蛭
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妙義の山をめぐるあいだに、わたしは山蛭に足を吸われた。いくら洗っても血のあとが消えない。ただ洗っても消えるものでない。水を口にふくんで、所謂ふくみ水にして、それを手拭か紙に湿して拭き取るのが一番いいと、案内者が教えてくれた。
蛭に吸われた旅の人は、妙義の女郎のふくみ水で洗って貰ったのですと、かれは昔を偲び顔にまた云った。上州一円は明治二十三年から廃娼を実行されているのである。
雨のように冷たい山霧は妙義の町を掩って、そこが女郎屋の跡だというあたりには、桑の葉が一面に暗くそよいでいた。(大正3・8)