11話 おばけの正体 第一一項 長崎の火の玉騒ぎ
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先年、余が長崎市に滞在せしとき、市内の一覧橋に深夜、一怪物の火光を発するものが現出するとの評判が起こり、われも彼も争ってその火の玉を見んとて橋上に集まる騒ぎが起こった。そのとき実地に探検したるものありて、トウトウ原因を発見するに至った。橋上より望むに、毎夜十一時後に、およそ十余町離れたる所に火光を発するものが見ゆるも、橋の前後にては見ることができぬ。これは、その橋が平地よりも高くかかっているからである。探検者はあらかじめ、その方角と距離とをシッカリ見定めておいて、その場所に至れば、桶屋町の呉服店の軒灯のガラスに、その向かい側の家にともしてある楼上の灯光が、反射して起こりたるものなることが明らかに分かった。呉服店の軒灯をともしてある間は怪しき光とは見えざれども、十一時ごろにこれを消し止めた後に、前家の灯より反射したる光が、橋上の人の目に奇怪に映じきたるために、妖怪騒ぎを起こすに至ったのである。