58話 おばけの正体 第五八項 白衣の幽霊
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むかし、余が駒込蓬莱町に寓居せしとき、門前に寺の墓地があって、その間を通過せざれば出入ができぬ。ある夕べ、下婢が食品を買いに出かけ、宅に帰る途中、墓間を通行せるに、白衣を着たる幽霊が現出しいたりとて、驚き走ってほとんど気絶せんばかりになって帰って来た。余はそのことを聞き、「己の臆病より呼び起こせるものならん」というも、当人は「ホントーの幽霊である」と申すから、念のために車夫に命じて実地を検せしめしに、その日、昼間に葬式があって、墓前に白き提灯をつるし置きたるのが、風のためにゆられていたのであった。下女のみならず、世間多くの人の幽霊談はこのようのものであろう。