ふしぎな人

6話 9 金色のとら

1,199字 約2分 2016年7月16日 公開

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 それから、家じゅうのそうさくが始まりました。

 明智たんていのぶかがふたり、書生がふたり、自動車のうんてん手、それに、黒ふくめんのままのポケット小ぞうもくわわって、六人が二組に分かれて、ろうかからろうかへ、へやからへやへと、さがし回るのでした。

 しかし、木村さんに化けた二十めんそうは、どこにもいません。もう、さがすところがないのです。

「あっ、このおし入れ、まだあけてみなかったね」

 ポケット小ぞうが、ろうかのおし入れの前に立ち止まって、そっとささやきました。

「うん、まだだ。あけてみよう」

 明智たんていのぶかが、おし入れの戸に手をかけて、そっと開きましたが、開いたかと思うと、

「わあっ……」

とさけんで、あとじさりをしました。

 おお、ごらんなさい。一頭の大きなとらが、ぬうっと、あらわれてきたではありませんか。

 黄色いからだに、太い、まっ黒なしまがついています。その黄色いところが、金色に光っているのです。らんらんとかがやく二つの目が、じっと、こちらをにらんでいます。

 家の中に、とらがいるなんて、なんという、ふしぎなことでしょう。まるで、考えてもみなかったことです。

 みんなは、あまりのおそろしさに、立ちすくんだまま、どうすることもできないのでした。

 金色のとらは、ゆうゆうと、おし入れの中から出てきて、のそりのそりと歩きだしました。

 そして、みんなのそばを通りすぎると、にわかに足を早め、いきなりかけだして、ろうかの向こうへまがっていってしまいました。

 ここは、たけしくんと、きみ子ちゃんのしんしつ(ねるへや)です。

 さっき、書生さんが来て、二十めんそうが、家の中にかくれているといったので、ふたりは、こわくてしかたがありません。ベッドから出て、パジャマを着たまま、へやのすみっこで、たがいのからだをだきしめて、ぶるぶるふるえながら、立っていました。

 すると、入口のドアが音もなく、すうっと開いたのです。そして、そのすき間から、金色に光るものがあらわれてきたではありませんか。

 とらです。びっくりするほど大きな、金色のとらです。

 ふたりは、あまりのふしぎさに、ゆめでも見ているのではないかと思いました。しかし、ゆめではありません。生きたとらが、ほんとうに、しんしつの中へはいってきたのです。

 大とらは、へやにはいると、あと足で立って、前足で、かぎあなにさしたままになっているかぎを、カチンとかけてしまいました。

 ふたりは、もう、にげ出すこともできないのです。

 金色のとらは、ふたりの方へ、のそりのそりと近づいてきました。

 さて、みなさん、これから、いったい、どんなことが起こるのでしょう。たけしくんときみ子ちゃんは、この大とらに食われてしまうのではないでしょうか。

 それにしても、家の中にとらがいたなんて、じつにふしぎです。これには、なにかわけがあるのにちがいありません。そのわけとは……。

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