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幸福が遅く来たなら

生田 春月 全1話 301字 2022年5月19日

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1. 幸福が遅く来たなら

『幸福』よ、巷(まち)で出逢(であ)つた見知らぬ人よ、

お前の言葉は私に通じない!

冷たい冷たいこの顔が、私の求めてゐたものだらうか?

お前の顔は不思議な親(したし)みのないものに見える、

そんなにお前は廿年、遠国をうろついてたんだ、

お前はもはや私の『望』にさへ忘れてしまはれた!

よしやお前が私の許嫁(いひなづけ)であつたにしても、

あんまり遅く来た『幸福』を誰が信じるものか!

私は蒼(あを)ざめた貧しい少女の手に眠る、

少女よ、どんなにお前は軟(やはら)かく、枕(まくら)のやうに

夜毎(よごと)痛む頭(かしら)をさゝへてくれるだらう!

少女よ、お前の名前は何と云ふ?

もしか『嘆き』と云やせぬか?

そんなら行つて『幸福』に言つてくれ、

お前さんの来るのがあんまり遅(おそ)いので

もはや私があの人のお嫁になりましたと!

幸福が遅く来たなら — 生田 春月 — https://noveliz.cc/n/tnj1cy3gqq

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